製造現場で働くロボット倍増へ、生産ラインの“穴”を埋める支援開始産業用ロボット(4/4 ページ)

» 2015年08月14日 07時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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産業ロボットの「目」と「脳」の高度化と普及化開発

 三次元メディアとSUWAオプトロニクスを助成先として研究開発が行われるのが「産業ロボットの『目』と『脳』の高度化と普及化開発」である。

 製造現場のロボット活用として部品のピックアップなどは一般的だが、整列されていない部品のランダムピッキングの難易度は高い。ランダムピッキングでは3次元ビジョンセンサーが必要となるが、モノづくり現場では、工場ラインの安定稼働のニーズが強い一方で、粉塵(ふんじん)やオイルミストなどが発生する工場もあり、こういった工場では3次元センサーに高い防塵性が求められる。一方、光沢の強い金属部品の認識には、十分に強い光が必要ですが、発生する熱を抑える必要があり、防塵性との両立が困難だ※3)

※3)関連記事:製造現場における画像処理【前編】

 そこで、今回のプロジェクトでは、産業用ロボットに「目」と「脳」を持たせ、3次元センサーの防塵化と高輝度化を図り、粉塵の多い工場などにおいても光沢の強い金属部品の認識が可能となることで、ロボットの応用範囲を広げていくことを目指す。

 具体的には、1200mmの視野に配置された対象物を計測するために十分な光量を出すことができ、かつ、発熱量を現行レベルから半減した高輝度密閉式のロボットビジョン専用プロジェクタを開発する。3次元計測の品質を高めることで、現在3次元計測できていない光沢の強い金属部品でも3次元計測できるシステム(移動撮影回数の半減)

を開発する。また、一番上にあるピッキング対象物に限定せず、認識された全ての対象物の中から最もピッキングしやすい部材を選択するシステムを開発する。

photo 開発する3次元マシンビジョン技術のイメージ 出典:NEDO

低コストなバラ積み自動車部品組み付けシステムの開発

 ヒロテック、シグマ、ダイキョーニシカワ、ワイテックの4社を助成対象とし、研究開発を進めるのが「低コストなバラ積み自動車部品組み付けシステムの開発」である。

 画像処理技術の高度化により、乱雑に配置された部品(バラ積み部品)の位置や向きを特定して、ロボットハンドでつかむ「ランダムピッキング」の活用が広がりを見せつつある。自動車部品は、バラ積み状態で工場に入荷されるものが多く、一部工程が自動化された専用機にその部品をセットするため、バラ積み部品を整列・配置する作業を人手で行う状況がある。しかし、自動車部品には、光沢の違いなどにより認識結果をバラつかせる要因を含む。その結果、正確なランダムピッキングを実現するために、高価な画像処理装置を必要とし、中小企業におけるロボット導入のハードルを高くしている。

 そこで、今回のプロジェクトでは、ひろしま産学共同研究拠点にて研究開発を実施。産総研でこれまでに開発されたランダムピッキング技術を核として、部品組み付け作業を自動化するため、導入コストを低く抑えた中小企業向けに適したビジョンシステムの開発を行う。

 具体的には、安価なセンサーから得られた粗い精度のデータを用いて、数mm程度の精度で部品の位置姿勢を推定するためのアルゴリズムを開発する。低価格でも望む精度の認識を得られるようにする。また、数mm程度の精度で認識した作業対象部品を、ビジョンセンサーで再認識することで位置姿勢を算出し、安定して治具へ組み付けることができるロボットハンドを開発する。

photo 安価なバラ積みピッキングを実現するための開発ポイントと役割分担 出典:NEDO
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