製造現場における画像処理【前編】製造現場で役立つ「画像処理技術」入門(5)(1/2 ページ)

製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。

» 2013年10月21日 10時00分 公開
[コグネックス,MONOist]
製造現場で役立つ「画像処理技術」入門

 本連載では、製造現場で用いられる画像処理技術にフォーカスし、その基礎・概要から、トレンド、導入事例に至るまでを詳しく紹介していきます。

 製造現場における画像処理技術とは何か? 本連載を通じ、その特徴やメリット、導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。

 これまで、画像処理技術で実現できることや画像処理製品の選び方などについて解説してきました。次に紹介するテーマは「製造現場における画像処理」です。今回と次回で、具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介していきます。


高精密製造で欠かせない画像処理

 画像処理が製造現場に最も効果をもたらすのは、やはり、「GIGI」の「G(ガイダンス)」でしょう。半導体業界では、画像処理の導入が早くから進んでいました。その理由は“人間の目では判断できないほどの高精密な製造が求められたから”に他なりません。

 シリコンウェーハ上に回路パターンを生成する露光工程、回路パターンの電気的検査を行うプローブ検査工程、ウェーハからダイに切断するダイシング工程、ダイのパッドとリードフレームをワイヤリングするためのワイヤーボンディング工程(画像1)など、いずれの工程も“ミクロンレベル”を超える微細なプロセスであり、人間の目ではとても品質を達成できません。こうした非常に厳しい製造要求を満たす上で、画像処理が最適かつ不可欠なのです。

ワイヤーボンディング工程 画像1 ワイヤーボンディング工程

ガイダンスアプリケーション事例

 例えば、以下の写真(画像2)をご覧ください。

PCB基板の位置決めアプリケーション 画像2 PCB基板の位置決めアプリケーション

 こちらはPCB基板に電子部品を実装するための位置決めアプリケーションの画像です。PCB基板の端には、画像処理でPCB基板の位置を観測するための“マーク(「位置決めマーク」などと呼ばれる)”があらかじめペースト印刷されており、このマークを観測することで搬送時に生じたPCB基板位置のズレを計測し、電子部品の実装位置を補正します。ご存じの通り、電子部品も小型化が進んでおり、PCB基板位置の認識に誤差があると適切な位置に電子部品を実装できず、不良品となってしまいます。このようなアプリケーションでは、位置決めマークの検出に幾何学形状認識をベースとした、パターンサーチツールを用います。

 幾何学形状認識パターンサーチツールでは、まず、テンプレートとなる比較的程度の良いワークサンプルの画像を撮影します。この画像から検出したいオブジェクトの形状特徴を選んで登録し、その形状に一致する画像特徴の座標を実行時に計測します。

モデル登録パターン検出実行 (左)画像3 モデル登録/(右)画像4 パターン検出実行

 このアプリケーションの一番のポイントは、パターンサーチが高精度に座標検出できることです。パターンサーチで計測したPCB基板の座標の精度が、まさに電子部品の実装精度となり、製品製造の歩留まりに影響してきます。高精度な座標検出は、撮影するカメラの画素数を増やすことで容易に実現できますが、高価なカメラを必要とすることになり、投資対効果を得にくくなってしまいます。そこで、画像処理ツールの性能が役に立ってきます。例えば、コグネックス社のPatMaxテクノロジを用いれば、1画素の40分の1もの計測分解能を持っており、低分解能の安価な産業用カメラでも半導体業界で通用する高精密なプロセス精度を実現できます。

 このアプリケーションには、もう1つ重要なポイントがあります。工業用製品であるPCB基板とはいえ、物理的に全く同じものを製造できるわけではありません。また、少量多品種製造の時代ですから、品種違いによるあらゆるケースに製造装置が適応していく必要があります。PCB基板でいえば、以下の画像ように、さまざまな変化が実在するのです。

違い1違い2違い3 PCB基板の品種による画像写りの違い(1) ※画像クリックで拡大表示

違い4違い5違い6 PCB基板の品種による画像写りの違い(2) ※画像クリックで拡大表示

 もし、画像処理にこのような品種の変動に適応できる性能がなかったら、実装装置として適応できるPCB基板の種類を限定しなくてはなりません。例えば、コグネックス社のPatMaxテクノロジは、このような品種の変動による画像条件の変化に柔軟に対応でき、現場環境も含めた品種のバリエーションに対しても高い適応力を持っています。

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