シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)はAI(人工知能)需要の拡大がもたらすデータセンターへの影響や、それを踏まえた同社の事業戦略について説明した。
シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)は2025年3月11日、東京都内で記者会見を開き、AI(人工知能)需要の拡大がもたらすデータセンターへの影響や、それを踏まえた同社の事業戦略について説明した。
シュナイダーエレクトリックは2024年12月期(2024年1〜12月)の決算で、382億ユーロ(約6兆円)という過去最高収益を達成した。成長を後押ししているのが、好調なデータセンター関連事業だ。
シュナイダーエレクトリック 日本法人 カントリープレジデントの青柳亮子氏は「データセンター向け事業の成長にけん引されて、エネルギーマネジメント事業および北米市場が他の地域よりも大きく伸びている。シュナイダーエレクトリックのデータセンター関連事業はこれまで、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティング、DX(デジタルトランスフォーメーション)などに成長を後押しされてきた。2024年から新たに成長因子として生成AIやLLM(大規模原語モデル)が加わった」と語る。
AIの普及、発展によってデータセンターの機能も変化してきている。従来のデータセンターは主にデータの保存や一般的な計算処理を目的に設計されており、汎用性の高いCPUが搭載されている。
AIデータセンターは、AIの学習や推論などの高度な計算処理を専門的に行うために作られており、高性能なGPUなど特殊なチップが大量に搭載されている。これらのチップは、膨大なデータを並列に処理することで、処理することで学習を高速化し、より高度なAIモデルの開発を可能にする。一方で、AIの計算や発熱の抑制に大量の電力が使われることも課題になっている。
「AIは、データセンターのみならず、次の産業革命といわれるほどの大きなトレンドとなっている。データセンターの電力容量や電力効率を最適化し、限られた電力資源でデータ活用を推進するなど、さまざまな要素を総合的に考慮しながら、AI対応のデータセンターの構築、拡大を進めることが求められている」(青柳氏)
AIデータセンターにおける電力供給と冷却管理の概念を表す言葉が「Grid to Chip」と「Chip to Chiller」だ。
Grid to Chipは、高圧受変電設備からGPUのチップに電力を供給するまでのデータセンターにおける電力供給の全体的なプロセスを指す。Chip to Chillerはデータセンターの冷却システムにおける一連のプロセスを表している。
シュナイダーエレクトリックは2024年10月にサーバの液冷技術を持つ米国のMotivairの株式を75%取得して買収した。シュナイダーエレクトリック セキュアパワー事業部 事業開発本部 本部長の三室昭佳氏は「Grid to Chipに関しては、シュナイダーエレクトリックは全てのポートフォリオをそろえている。Chip to ChillerについてもMotivairの買収で全ての冷却に携わることができるようになった」と語る。
シュナイダーエレクトリックは2024年12月に、三相UPS(無停電電源装置)の「Galaxy VXL」を発売した。UPS内のパワーモジュールの効率を高め、発熱を抑えたことでヒートシンクなど周辺機器の小型化を実現。UPS自体も設置面積1.2m2というコンパクト設計となった。容量は500kWから1250kWまで125kWずつ拡張できる。保守は正面から全て行うことができ、側面や裏面のスペースも不要だ。
40フィートや20フィートの輸送用コンテナを使ったモジュール型のコンテナデータセンターの需要も急増している。
「われわれの従来機種と比べて70%ほど設置面積が小さくなっている。容量にもよるが、他社製品と比べても半分や3分の1ほどになる。コンテナデータセンターだけではなく、既存のデータセンターを回収したい事業者にも喜ばれるものになっている」(三室氏)
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