ドイツの自動車メーカー フォルクスワーゲンの工場で、産業用ロボットによる事故が発生した。インダストリー4.0などで、工場やロボットの自律化への動きが注目されているが、製造現場ではこの事故をどう受け止めるべきだろうか。
英ファイナンシャルタイムズや、英BBCなどは、ドイツのフォルクスワーゲン(以下、VW)の工場で、産業用ロボットにより技術者が命を失うという事故があったことを報じている。
これらの報道によると、フランクフルトの北にあるバウナタル(Baunatal)の工場で、事故が起きた。同工場で産業用ロボットが技術者をつかみ、金属の板に押し付けたという。同技術者は、その後病院に運ばれたが亡くなった。その時は、ロボットの設置チームの一員として働いていたとしている。
この報道は、ロボット対人間の争いを描いた映画「ターミネーター」になぞらえる形でSNSなどで大きな注目を集めた。一方で、「ドイツの製造現場」で起きた事件だけに、製造業の関係者からも高い関心を集めている。ドイツではまさに「インダストリー4.0」など、工場や製造現場の自律化に向けた取り組みを進めているからだ。
ドイツで取り組まれているモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0※)」は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やICT(情報通信技術)の力をフル活用し、生産効率の抜本的な改革を実現しようとするものだ。実際の製造現場の情報を吸い上げ、サイバー空間でコンピューティングパワーを活用して分析し、最適な結果をフィードバックして製造現場での行動に反映する「サイバーフィジカルシステム」がポイントだとされている。このサイバーフィジカルシステムの力を使って、大量生産(マスプロダクション)と同じ効率で、個別の製品を作る「マスカスタマイゼーション」を実現することを目指す。それには、作られる製品や、製造装置、産業用ロボット、運搬装置などが、それぞれ情報交換を行い、「自律的に」動作できるようにすることがポイントとなる。
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しかし、自律化した工場において、産業用ロボットや製造装置が、思わぬ動作をするとしたら……。今回の事故は、そういう危険性を想起させるため、注目を集めているのだ。
ただ、これらの関心や報道に対し、専門家は「見るべき問題の本質が間違っている」と語る。
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