革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、今回からは「原価低減推進のために必要な科学的アプローチの手法」についてお伝えしています。今回は主に「三現主義」と「PDCAサイクル」について解説します。
IE(Industrial Engineering)を基に、革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について分かりやすく解説する本連載。
今回からは3回にわたって減価低減推進のために必要な科学的アプローチの手法についてお伝えします。本稿では主に「三現主義」と「PDCAサイクル」について解説します。
昨今、企業の作業改善に関する取り組みを見ると「場当たり的な改善」や「単なる思い付きによる改善」が多く見受けられます。そういった方法がまれに効果を発揮する場合もありますが、その多くはより丁寧な取り組みによって得られたはずの大きな効果を失っていたり、論理的思考やアイデアなどによる自己成長の貴重な機会を逃したりしています。改善による成果を確実に挙げていくためには“科学的アプローチ”は欠かせません。
科学的とは「物事を実証的、論理的、体系的に考えるさま。また、思考が事実に基づき、合理的、原理的に体系づけられているさま」と辞書にあります。改善に向けたアプローチにおいて“科学的である”ということは、現状の把握から改善案の実施・フォローアップに至る全ての改善ステップに対して、実証的かつ論理的に系統立てて進めていくということです。
その手法は複数ありますが、本稿では一般的によく活用される手法について解説していきます。科学的アプローチに基づいた改善を実践することで、論理的思考を醸成し、大きな改善効果を得てほしいと思います。
最良の改善策を得るためには、その対象となる物事をよく理解することから始める必要があります。その際の基本となる考え方として「三現主義」という“現場・現物・現実”の3つの“現”を重視するというものがあります。具体的には、何か問題が発生したときに、“現場”で実際に不具合の起きた“現物”を見て、それが今どのような状態にあるのかという“現実”を確認し、本質を見極めて解決を図るということです。
まずはこの三現主義を基本として、対象となる物事を正しく理解することから始めましょう。三現主義は徹底した現場分析を行うことですが、ここでの目的は効率的な分析を行い、それを踏まえて効果的な改善成果をあげることです。そのためには常にインプットとアウトプットを考えながら改善を進めていかなければなりません。
効率的な分析を行うためには、概略分析による改善案の概略の作成と、詳細な改善案を作成するための詳細分析が重要になります。そしてこの“分析”と“改善”のサイクルを回しながら、目的に近づいていくという考え方が効果的です(図1)。
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