革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する連載「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」。今回からは、原価低減活動に役立つ“モノづくりの神髄”について、前編、中編、後編の3回に分けて解説します。
今から二十数年前に、私が現役で日々原価低減に勤しんでいたころ、今となってはもう出典を調べる術はありませんが、以下のトヨタ自動車の「トヨタ生産方式」に関する記述に出会ったとき、何か“モノづくりの神髄”に出会った気持ちで目からうろこが落ちたような気さえしました。この時から心機一転、原価低減により一層、頑張っていった思い出があります。それは次のような内容でした。
生産方式は、どんな製品のどんな工程にも当てはまる「モノの造り方」の公式はない。従って、ある会社は1つの製品を1人で造り、他の会社は2人で造る、作り方に無関心の会社は3人で造る。
この場合、3人で造っている会社は、倉庫やコンベア、さらには設備までもが多い。そして、これに伴って間接人件費が増大する。原価は倍くらいになり利益に大きな差がつく。
しかも、この差は現在だけではない。毎年の投資額にもそのまま影響される。投資は、どうしても現状をベースにして立案されるからである。このような固定費は、いったん投資をしたら最後、後で不要と分かっても取り返しがつかない。このような過剰投資の恐ろしさを考えると、これは企業にとって由々しき問題である。
これを防ぐためには、日々あらゆる面で生産や事務作業の効率化を図り、工数や機械設備などの原単位(一定量を生産するために必要な各生産資源の量)をできるだけ小さくし、次の投資に反映させていくより手はない。
この文章に出会ったとき、感動で身震いを感じると同時に、自分の浅学さを反省した次第でした。その後、“モノづくりの神髄”とは何かを追究し続けた結果、いろいろなことが分かってきました。その一部について紹介したいと思いますので、皆さま方のこれからの原価低減活動にお役立ていただければと思います。
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