革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、3回にわたり「効果的な原価低減推進の考え方」についてお伝えしています。後編となる今回は「動作改善の3原則」について解説します。
IE(Industrial Engineering)を基に、革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について分かりやすく解説する本連載。3回にわたって「効果的な原価低減推進の考え方」について解説しています。
今回は効果的な原価低減推進の考え方【後編】として、改善を進めていく上で忘れてはならない「動作改善の3原則」について解説します。
「改善」によって企業に利益の増大をもたらすことができれば、事業を継続していくことが可能となることは確かです。しかし、改善を行うときに、人の存在を無視して改善活動を行っても、長続きはしません。仕事の効率を追求するあまり、仕事を単純化し過ぎたり、特定の人に負荷が掛かり過ぎたり、あるいは集中力が要求され過ぎたりすると、かえって逆効果となります。
早く疲れたり、仕事に飽きたり、仕事にやりがいが感じられなくなってしまっては、長い目でみれば仕事の効率は落ちてしまうという結果になります。組織は人の集合体ですので、そこに所属する人の仕事を楽にして、その結果として利益も得られるという優先順位が重要です。
“改善”とは、例えば、やりにくい仕事や疲れる仕事など「悪いところをあらためてより良いものにする」というのが、“改善”の本来の意味です。目的と手段をどのように捉えるかということで、改善活動の成果が大きく異なります。
動作改善3原則とは、「『疲れる』ということを休憩を必要とする一種の信号の受信状態」と理解し、「疲れ」を生み出すのは作業に問題とすべき何らかの欠点があるからだと考え、疲労の原因となることを追放しようという考え方です。
例えば、毎日、繰り返している仕事の中にも、たくさんの疲労があると思います。全身がだるい、肩が凝る、足が火照る、足が重い、目が疲れる、動作がぎこちない、気が散るなど、身体的、精神的な症状がそれです。その疲労そのものを改善対策として取り上げようというものです。
主な疲労の種類には以下の4つがあります。
これらの疲労および疲労の原因となる作業を追放するというのが動作改善3原則となります。具体的には以下の3つの作業を追放するということを目指します。
動作改善3原則の追放の狙いは、仕事を“楽”にしようということです。「楽(らく)して儲かるか」という声も聞こえてきそうですが、「ムリな働き方」は現象であり、そういった現象を生み出す原因こそが改善の対象となるのです。「楽な仕事」は、作業時間のバラツキを抑え、安定した作業の遂行につながるばかりか、作業時間そのものを短縮します。また、何よりも「作業が楽になる」という改善目標は、現場の人達の自主的な改善活動を生み出す効果も期待できます。
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