「ケガをした」や「不良を出した」などという場合、“不注意”という言葉がよく使われることになります。ここで、注意のいる仕事を問題にしようというのは、その不注意という言葉そのものの追放が目的でもあります。
不注意には2つの要素が存在しており、1つは注意をどこに向けるかという問題です。人は何かに注意することはできても、自分の意思で不注意になることはできません。例えば、そこに穴があることを知っていて、穴に落ちる人はいません。つまり、適切なポイントに対し注意できていないということが不注意につながるわけです。
もう1つは「注意の働き」という面から見た「注意力低下」です。精神的緊張による疲れの他に、意識作用の関与なしに発生する神経的な不注意があります。例えば、緊急の場合、目や耳などから受けた刺激が、習熟した動作の中でも脳を通らずに直接に手足に行動を命令するという行動が起こります。これによって不良品を作っていても、危ないことをしていても気が付かないといったことが生じます。その他、不注意の事例を以下に少し追記しておきます。
われわれは「真っすぐなものは連続しているもの」と慣習的に見てしまいます。そのため、例えば溝のふたが外れかかっていても気が付かずに溝に落ちてしまうということが起こり得ます。
例えば、手紙を出そうとカバンに入れて出掛けると、交差点で信号が点滅していたとします。急いで渡ろうと、そちらに気持ちがいってしまい、結果的に渡り終えた後には何をすべきだったのか、忘れてしまうことがあります。これが意図の忘却です。
これらの傾向を見た場合、人間は注意をすることが多すぎると注意が散漫になる傾向があるといえます。すなわち、不注意の状態が生まれやすくなるのです。一方で、そうならないように注意に注意を重ねると、逆に精神的緊張により疲れを伴い、結局は能力を発揮することができないという結果になります。注意のいる主な仕事には次のようなものがあります。
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