企業の事業活動は、製品やサービスを通して社会貢献を果たしながら、利益の増大と繁栄を図ろうとする継続的な活動であるといえます。企業は事業活動を継続し、拡大していくことで利益を得ていくわけですが、例えば、材料費の高騰、市場での製品価格の下落、競合企業による新製品の市場への投入などによりシェアが縮小するなどの事業環境の変化に素早く対応できなければ、利益の確保はままならなくなってしまうことは容易に推知できます。
企業はいったん事業を開始したならば、継続的に利益を確保し続けなければなりません。そのために、経営者のみならず所属する全社員が一丸となって原価の低減に全力を尽くさなければならないことはいうまでもありませんが、実は、その原価低減によって削減された経費が、そのまま利益の増加に反映されることで、初めて、実行された原価低減が利益確保の代替指標として意味を持つ訳です。しかし、多くの企業の原価低減活動は、“見かけの原価低減”となってしまっている場合が予想外に多いという実態があります。つまり、原価低減活動として経費を節減したつもりになっているだけで、実際には利益を生み出していない場合が多いということです。
このような事態を回避するためには、“モノづくりの神髄”を理解した改善が重要となります。効果的な改善は、「“モノづくりの神髄”の理解」に尽きるといっても過言ではありません。つまり、物事の核心を捉える考え方・見方の枠組みをシフト(変更)することで、利益確保に直結した効果的な原価低減活動を推進していくことが可能になります。ここでは、真の原価低減(利益確保に結び付く)活動における“モノづくりの神髄”の理解について述べたいと思います。
先にも述べました通り、企業は継続して経済的発展を遂げていかなければなりません。そのためには、全社員が仕事に費やす費用やロスをいかに少なく抑えていくかという原価意識をもって仕事に取り組んでいかなければなりません。これは、継続して利益の増大を図っていく他ありませんが、その代替指標として頻繁に活用される「原価低減」があります。
つまり、「“利益向上”の代わりに、より実践的で理解しやすい“原価低減”を行うことで利益が確保できるはずである」という考え方です。原価低減活動の多くは、材料費などの費用の削減もありますが、ほとんどの場合は、ST(Standard Time)低減などの作業時間の削減としてとらえています。原価を1円でも下げたいというのが原価低減活動に携わる人達の願いであり、コスト(ST×単位時間当たりの賃率)は金額で表されることは誰しも承知しているはずなのに、改善によって得られた生産性(能率)の向上を金額に置き直してみるということが、案外と行われていないというのが実情ではないでしょうか。
さらに、今まで疑う余地もなく信じて行ってきた旧態依然としたこの原価低減の方法に、大きな落とし穴があります。例えば、改善によって作業時間を削減しても、必ずしも利益を生み出しているとはいえない場合もあります。むしろ、一般的に行っている原価低減活動の多くがこの類いであるといっても過言ではありません。また、日常的に行われている“ムダの排除”は原価低減と思い込んでいることも同様です。このように利益の増大に寄与していない“原価低減”は、“利益向上”の代替指標にはなり得ないわけです。これらの具体的事例の幾つかについて、紹介していきたいと思います。
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