電気自動車を開発中と報じられたアップル。自動運転車の開発を加速させるグーグル。独自の配車サービスで存在感を示すウーバー。自動車業界参入の動きを活発化させているこれらのIT企業だが、果たして自動車そのものを製造販売するようになるのだろうか。
近年、IT企業による自動車業界参入の動きが活発化している。2014年にApple(アップル)は「CarPlay」、Google(グーグル)は「Android Auto」で同市場に参入した。これらは、スマートフォンと車載システムをシームレスに連携することを目的とした「車載システム向けOS」であり、目的はあくまでもスマートフォンの魅力向上だ。
しかしここ数カ月、新たな動きが話題になっている。それは、IT企業による自動車「製造」に向けた動きだ。グーグルが2012年に自動運転車を発表したことから自動車業界に激震が走り、自動車メーカー各社による自動運転車の開発が急速に活発化した。Tesla Motors(テスラ)はIT企業出身でありながら電気自動車(EV)をゼロベースから作り上げ、既に販売に至るなどEVメーカーとしての存在感を持ち始めている。そして2015年2月、モバイルアプリによる配車サービスを展開するUber(ウーバー)が、カーネギーメロン大学と提携して自動運転車の開発に着手することを発表した。そこにアップルが2020年をめどにEV市場に参入するとの報道が流れた。
なぜこれらIT企業が自動車業界に参入するのか。その目的は何なのか。そして、自動車そのものを製造販売するようになるのか。ひも解いてみたい。
近年はアップルやグーグルの動きが取り沙汰されているが、実はIT企業は元よりクルマとの関連は深い。自動車メーカーやアフターマーケット企業が数多く展開している、テレマティクス機器や車載情報機器(インフォテインメント)といった車載システム向けの組み込みOSには、BlackBerry(ブラックベリー)傘下のQNX Software SystemsやMicrosoft(マイクロソフト)の「Windows Automotive」、Linuxなどが採用されている。またFord Motor(フォード)は、2007年後半から展開を始めた車載情報機器プラットフォーム「SYNC」の開発で、当初からマイクロソフトと協業するなどその間柄はOS提供にとどまらない。
そこにスマートフォンが登場した。2007年のiPhone発売以降、さまざまなものがスマートフォンで代用できるようになった。代表的なものとして、PCや音楽プレーヤーなどが挙げられるが、カーナビゲーションを含めた車載情報機器もその1つといえる。消費者は、カーナビゲーションなどのスマートフォンの豊富なコンテンツを、車内でも利用したいと考えるようになっている。アップルやグーグルの車載システム向けOSの提供は、まさにこの流れを反映している。
加えて、急速な普及によってスマートフォン市場は既に飽和状態に近づきつつある。スマートフォンの活用を主軸に置く両社は、新たな市場を早急に開拓する必要があり、そこで白羽の矢がたったのがクルマという「端末」なのだ。
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