日立製作所と日立産機システムは、産業用モーターの国際高効率規格で、最高レベルのIE5を達成するアモルファスモーターを、共同開発したと発表した。
日立製作所と日立産機システムは2014年7月9日、産業用モーターの国際高効率規格の最高レベルであるIE5を達成するアモルファスモーターを、共同開発したと発表した。
日立製作所と日立産機システムは、変圧器で培ってきたアモルファス金属に関する加工ノウハウを持つ。そこで今回、アモルファス金属材料が持っている特性を引き出すため、アモルファス金属を鉄芯に用いる11kW容量のアモルファスモーターを企画。加工の難しさなどの課題を、アモルファス金属の高精度評価技術と最適設計技術を開発したことで乗り越え、さらにこれらによりアモルファス金属の特性に合った適正設計を行うことで、モーターの効率を大幅に向上させることに成功した。
アモルファス金属は、従来のモーターに使用されている電磁鋼板と比べて鉄損が約10分の1と、大幅に損失が低い材料だ。しかし、モーターのステーター鉄芯に用いる場合、加工時の影響による磁化特性や鉄損特性が劣化する加工劣化性が問題となっていた。そこで今回、鉄心の表面に超小型磁気センサーを配置することで、従来測定できなかった内部の磁束の流れなどを測定。測定誤差を±5%以内と、大幅に精度を向上することに成功した。
加えて、三次元有限要素法解析技術とパーミアンス法による高速・高精度モーター設計手法を開発。電気特性から熱計算までの特性予測がこれまでの10分の1の時間で行えるようにした。さらに精度も2倍以上に引き上げ、これまでよりも高効率な設計が行えるようになった。
これらの技術を生かして、11kW容量のアモルファスモーターを開発。従来のサイズ以下で、これまでのIE4クラスモーターの損失をさらに3割低減し、96%の高効率化を実現できることを確認した。今後は、2016年3月期(2015年度)の製品化を目指し、技術開発を進めていく。発売後は産業用ポンプやファン用途向けなどに販売をしていく予定だという。
なお、同技術の一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業」を受けている。
産業用モーターの効率化については、ここ数年規制強化が進行。米国では2010年からIE3以上のモーター使用の義務づけが開始されており、日本でも2015年度から同様の規制強化が開始される予定となっている。これらのことを背景に産業用モーターの電力効率向上は大きな関心を集めている(関連記事:2015年春の規制開始に向け各社がトップランナー基準適合モーターをアピール)。
日立製作所と日立産機システムでは、2014年7月23日〜25日に、東京ビッグサイトで開催される「第32回 モータ技術展(「TECHNO-FRONTIER 2014」内)」において今回の技術を展示する予定だという。
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