2015年春の規制開始に向け各社がトップランナー基準適合モーターをアピールFAフォーラム・イベントリポート/TECHNO-FRONTIER 2013|第31回 モータ技術展(1/2 ページ)

「TECHNO-FRONTIER 2013|第31回 モータ技術展」(会期:2013年7月17〜19日)において、産業用モーターメーカー各社は2015年春に施行される「トップランナー基準」に対応した、プレミアム効率(IE3)モーターを展示していた。

» 2013年07月25日 11時36分 公開
[佐々木千之,MONOist]
第31回 モータ技術展

 2013年7月17〜19日の3日間、東京ビッグサイトでメカトロニクス/エレクトロニクス関連の総合展示会「TECHNO-FRONTIER 2013」が開催された。本稿では、TECHNO-FRONTIER 2013の構成展示会「第31回 モータ技術展」の中から、2015年から規制が始まるとしてFA業界で注目を集めている産業用モーターのトップランナー基準を満たす、「プレミアム効率モーター」関連の展示をリポートする。


トップランナー基準導入の背景・概要

 まず、モーターのトップランナー基準についておさらいしておこう。

 世界の電力需要用途をカテゴリー別に見たとき、モーターによる需要は全体の46%を占め、非常に大きく(出典:Motor Summit 2012)、工場・事業所の電力の多くがモーターにより消費されているという。こうした実態を受け、経産省などが国内での規制を検討。モーターを高効率化することで、工場・事業所の使用電力を減らそうと考えた。

モーターによる電力需要は全体の46%を占める モーターによる電力需要は全体の46%を占める(出典:Motor Summit 2012、写真は三菱電機ブースのパネル展示)

 2009年の資源エネルギー庁の調査によると、産業界でポンプ、送風機、圧縮機などで使用されている三相誘導モーターは1億台以上普及しており、日本国内の産業部門の消費電力量の約75%、消費電力量全体からみても約55%も占めているという。既存の三相誘導モーターを効率の高いものに置き換えることで、大きな省エネ効果が期待できる(※筆者注:家電用などの小型低圧モーターについては既に規制がかかっている)。

 三相誘導モーターの効率レベルは、国際規格であるIEC(International Electrotechnical Commission)に規定されており、「IE1(標準効率)」「IE2(高効率)」「IE3(プレミアム効率)」「IE4(スーパープレミアム効率)」などのクラスに分類されている。

 国際的には、米国や欧州で効率規制が実施されて高効率化が進んでいるが、日本では標準効率(IE1)のものがほとんどで、高効率なモーターは普及していない。日本で普及が進まない理由としては、プレミアム効率(IE3)モーターは標準効率モーターに比べて高価(4〜6割増し)で、特に、製品にモーターを組み込んで販売するセットメーカーにとっては、製品コストが上がる一方で、効率向上に伴うメリットがなく高効率モーターを採用するインセンティブが働かないことが挙げられる。エンドユーザーレベルでも、インバーターの導入や負荷低減の取り組みが優先される一方で、モーター自体の高効率化に向けた取り組みがなされていないことや、稼働しているモーターを買い換えるインセンティブが働かないことが理由として挙げられる。

 こうした現状に対し、2013年1月に経済産業省 省エネルギー基準部会の小委員会が、2015年4月から新規製造機器に組み込むモーターや、既存機器のモーター交換の際に、“プレミアム効率(IE3)相当のトップランナーモーターを供給しなければならない”という規制をかけると決定した。2013年度中に省エネ法が改定され、告示される見通しだ。試算によれば、国内モーター全てがプレミアム効率モーターに置き換わった場合、国内電力消費量全体の約1.5%に当たる年間155億kWh、約500万トンのCO2排出を削減できるとしている。

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