スマートハウスの“すでに起こった未来”――スマートセル的な作り方とは和田憲一郎の電動化新時代!(12)(4/4 ページ)

» 2014年03月27日 11時30分 公開
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インタビューを終えて

 一見、スマートセルは、複数の地域で実施されているスマートハウス/スマートコミュニティーの実証試験と大きく変わるところがないかのように見える。しかし、今回の取材を通して、他の実証試験との違いが理解できた。一般的なスマートハウスの実証実験は、系統電力、太陽光発電、蓄電池、家庭用機器さらにはEVをつなげることで得られる“経済的な効果”を検証するものだ。しかし、スマートセルは、全ての機器を数式化したモデルでつなぐという、“つなぎ方”そのものの実証試験なのである。

 モデルベース開発は、「i-MiEV」などのEVや航空機の制御システム開発で既に活用されている。しかし、多様な要素が集まるスマートハウス/スマートコミュニティーの開発に、モデルベース開発を投入したことに、スマートセルの価値がある。またV2Hなども含めて機器間の接続認証制度が必要になった時に、検証の効率化の面で大きな効果を発揮するであろう。

 一方、世界各地で太陽光発電、蓄電池、V2Hなどを活用したスマートシティ構想が進んでおり、この分野でも国際競争が激化しつつある。スマートセルの先進的な取り組みは評価できるが、より具体的な実用化に向けた道筋を付けることも必要ではないか。これは、電力、家電、住宅、自動車の各業界に突き付けられている課題でもある。

 スマートセルそのものは新たな“つなぎ方”の実証試験にしか過ぎない。しかし、将来のスマートハウスでは必ずこのような“つなぎ方”になるだろう。そういう意味では、既に起こっている事象ではあるが、未来を先取りした技術革新であるとも言える。

 突き詰めれば、“スマートセル的な作り方”とは、ドラッカーの言う“すでに起こった未来”*1)なのかもしれない。

*1)既に起きてしまい、重大な影響力を持つことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化のこと。経営学者のピーター・ドラッカーが、著書「すでに起こった未来―変化を読む眼」などで指摘している。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

1989年に三菱自動車に入社後、主に内装設計を担当。2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。2007年の開発プロジェクトの正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任し、2009年に開発本部 MiEV技術部 担当部長、2010年にEVビジネス本部 上級エキスパートとなる。その後も三菱自動車のEVビジネスをけん引。電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及をさらに進めるべく、2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立した。


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