現在富士通セミコンダクター会津若松工場2番館では、8000m2のクリーンルーム中2000m2で低カリウムレタスの生産を行い、残りの6000m2は空いたままだ。2016年度(2016年4月〜2017年3月)に売上高4.0億円を目指すには、工場も増設の必要があり、1000m2の増床については既に視野に含んでいるという。
また現在は低カリウムレタスの生産を行っているが、小松菜など他の低カリウム製品の生産試験も行っているという。また完全に環境管理できる特性を生かし、味を変えたレタスなどの可能性も模索しているという。
富士通ではこの植物工場での実践により、新たな機能性野菜事業を軌道に乗せる一方でこれらのノウハウを同社のICT製品に吸収し、植物工場でのベストプラクティス構築を進めていく方針だという。
富士通 統合商品戦略本部長 兼 ソーシャルクラウドサービス本部長の阪井洋之氏は「これらのノウハウを吸収し、植物工場とICT製品それぞれを強化する一方で、さらにこれらを結び付け植物工場の成功ノウハウをパッケージ化した提案なども進めていきたい。また富士通が代替で運営するODMのような仕組みも可能性としては考えている」と話す。
実際にICTへのニーズを通じて、富士通に工場丸ごとの運営を任せたいという企業の打診も多いという。
ここまで富士通の植物工場への取り組みを見てきたが、最後に製造業としての植物工場の可能性に触れておきたい。
現在国内の製造拠点は厳しい状況にさらされている。経済産業省から発行されている「2013年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」によると、国内の工場敷地面積は緩やかな減少傾向が続いており、1996年に14.81億m2だったのが、2010年には約14.07億m2となっている。国内市場が少子化により徐々に縮小していくと見られる中、国内では“工場が余る”という状況が徐々に出始めている(関連記事:海外流出は是か非か、進む日本のモノづくり空洞化)。
一方、農業も国内生産額は1990年の13.7兆円をピークに減少し続けており、農家の数も1960年から2009年にかけて4分の1まで減少している。また農業従事者の平均年齢は65歳を超えるなど、抜本的な改革が必要な状況になっている。
販路開拓などビジネスモデルの構築は決して簡単ではないが、植物工場はこのそれぞれの厳しさを補完する可能性を秘めているのではないだろうか。製造業が農作物を作る。そんな時代が来るかもしれない。
植物工場、ハイテク施設園芸……。製造業のノウハウを活用し、農業が新しく生まれ変わろうとしている。新たな農業のカタチはどう変化していくのでしょうか。
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