凸版印刷は、モノのざらつき感や光沢感といった“質感”を記録・再現することが可能な「質感表示技術」を開発した。モノの色に加え、微細な凹凸、光沢特性といった質感情報をデジタル撮影によって記録し、CGで再現できるという。
凸版印刷は2013年9月10日、モノのざらつき感や光沢感といった“質感”を記録・再現することが可能な「質感表示技術」を開発したと発表した。
人が視覚でモノの質感を認識・判断する際、その手掛かりとなるのが陰影や光沢だ。しかし、観察する方向や照明の方向によって、陰影や光沢の見え方は異なる。そのため、従来の撮影データや印刷物は、特定の照明下で、特定の方向から被写体を見た“その瞬間”を切り出して再現したものにすぎず、本来の質感を網羅的に知ることが困難だった。
今回開発した質感表示技術は、モノの色に加え、微細な凹凸、光沢特性といった質感情報をデジタル撮影によって記録し、コンピュータグラフィックス(CG)で再現することを可能にしたもの。具体的には、対象となるモノについて、照明の方向を変えた複数の写真を撮影。その撮影から得られた入射光と反射光の方向・強度の関係を解析し、対象物(モノ)の質感特性をデータ化する。これを、マウス操作でリアルタイムに照明位置の変更が行えるビュワーソフトウェアで表示し、任意の照明位置でのモノの見え方を再現できるようにした。
なお、東京国立近代美術館工芸館で開催される企画展「クローズアップ工芸」(会期:2013年9月14日〜12月8日)において、質感表示技術を活用した展示を見ることができる。富本憲吉作『色絵金銀彩羊歯文八角飾箱』の実物展示とともに、23インチのディスプレイに質感表示技術を用いたCG(蓋表部分が対象)を表示。マウス操作で照明位置をリアルタイムに変更しながら、通常の展示では見ることのできない作品の表情を鑑賞できるという。
デジタルカメラの撮影データや印刷物などにおいて、色を正確に記録・再現するカラーマネジメント技術の開発を進めている同社。今後は、質感表示技術にも注力し、画像や動画に対して質感を付加することで、電子書籍や電子カタログの表現の幅を広げるなど、新たな表現手法を展開していきたい考えだ。
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