製造業ビッグデータ、潜在的な経済効果は約4兆8000億円――情報通信白書製造ITニュース

総務省は2013年7月16日、2013年版の情報通信白書を公表した。ICT活用における価値として「ビッグデータ」を据え、製造業においてはリモートメンテナンスによる業務効率化や節電効果などにより、約4兆8000億円の経済効果が見込まれるという試算を明らかにした。

» 2013年07月17日 12時00分 公開
[三島一孝,MONOist]

 総務省は2013年7月16日、「情報通信に関する現状報告(平成25年版情報通信白書)」を公表した。情報通信白書は総務省が毎年発行する、情報通信の現状を示すデータや政策の動向を示す白書のことだ。総務省の関連サイトで全文掲載されている。

 「スマートICT」活用による産業の成長を1つのテーマとして掲げているが、技術的に成長が期待されているのが「ビッグデータ」関連だ。ビッグデータ関連では、製造業の他、小売業、農業、インフラ(道路・交通)の4分野について、詳細分析が行われているが、4分野で約7兆7700億円の潜在的経済効果があるという。




 ビッグデータは現在でも定義が曖昧ではあるが「多種多量なデータの生成・収集・蓄積がリアルタイムで行えるようになり、これらのデータを分析することで未来の予測や異変の察知などを行うこと」だとされている。

 製造業では現在、製品に取り付けたセンサーにより、納入後の稼働状況を把握して活用するビッグデータ事例が目立つという。以前から産業用の大型機械(発電用タービンなど)では、運転監視用に多数のセンサーが取り付けられていた。またエアコンや工作機械などにも自動制御用のセンサーが組み込まれている。これらに加え、自動車やカーナビゲーションシステムなどに多くのセンサーが取り付けられるようになった。これらのセンサー情報を収集し、納品した製品の稼働情報をビッグデータとして管理・分析することで、新たな価値を生み出す事例が増えているという。

アフターサービスの効率化にビッグデータを活用

 新たな価値として最も多いのが、アフターサービスの効率化だ。ビッグデータ分析により故障の前兆となる情報の検出や摩耗状況の予測などを行うことができ、故障の「予防保守」を実現できる。計画的な現場訪問の実現による業務効率化や故障発生時の対応の迅速化なども可能としており、エンドユーザーの損失を最小限にとどめられる。

 一方で稼働状況を分析し、稼働の改善点を提案することで、顧客企業の節電や機器の寿命延長を実現するサービスを提供する事例なども多いという。これらのサービスは有料化も可能で、ビッグデータの活用による製造業の新たな付加価値サービスとして注目を集めている。

製造業における活用パターンと効果発現メカニズム 製造業における活用パターンと効果発現メカニズム(出典:総務省「ICT分野の革新が我が国社会経済システムに及ぼすインパクトに係る調査研究」)(クリックで拡大)

約4兆8000億円の潜在的経済効果

 これらの事例を基にした試算では、ビッグデータ活用による大きな経済効果が見込まれているという。リモート監視によるメンテナンス人件費の効率化で約4兆7380億円、業務用エアコンのリモート監視による節電効果で約520億円の経済効果があり、製造業全体で約4兆7900億円の潜在的経済効果があるという。これは2010年の機械器具製造業の出荷額の15%以上を占める数値だ。今後ビッグデータに関する新たなサービスが増えれば、さらに潜在的な経済効果は高まるものと期待されている。

潜在的な経済効果の推計結果 潜在的な経済効果の推計結果(出典:(出典)総務省「ICT分野の革新が我が国社会経済システムに及ぼすインパクトに係る調査研究」)(クリックで拡大)

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