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» 2013年07月02日 10時00分 公開

走行中の姿勢制御を実装し、目標走行時間を突破せよ!!マイクロマウスで始める組み込み開発入門(15)(3/3 ページ)

[三月兎,MONOist]
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 上級レベルのマイクロマウス競技参加者の多くは、姿勢制御に「PID制御」を取り入れています。今回紹介した制御は、偏移(P)ではなく、センサー値にゲインを掛けて制御量を求めて単純化しています。

 PID制御を実装しようとすると、偏移(P)、積分値(I)、微分値(D)が三つどもえになり、それぞれのバランスをどうとるか、その調整が複雑になります。そこまで複雑なことをすると、初心者のえみちゃんには難し過ぎるので、今回は偏移(P)を簡略化した制御だけに絞りました。

 走行距離の補正も、前壁だけに頼っていては長い直線が続くと補正するタイミングが得られないので不十分です。これに関しては迷路探索を終え、スピードを上げて最短ルートを走るときに影響が出やすくなります。

 この対策としては、「壁切れ補正」を実装します。前壁だけではなく、壁の切れ目で前後位置を補正することで対策します。

 もう1つ大きな問題として、「外乱光対策」があります。迷路内を走るとき、光の条件が一定であるとは限りません。LEDを照射したときと、していないときの差分を見て、ロボットが出している光の量だけを見ることで基本的な外乱光対策が可能です。他には、パルス発光して外乱光と区別したり、フィルターで対策したりする方法もあります。

 今回の制御は初歩の初歩ですが、筆者チームはこれだけでも初級者クラスの競技時間(7分間)を走り続けることができました。初級者のうちは、あれこれと欲張らずに基本的な制御をしっかりと実装する方がいいと思います。

 まずは、全国大会決勝の競技時間である“5分間連続走行”を目指しましょう。迷路はいろいろなパターンを作成し、どんな迷路でも走れることを確認します。徹底的に走らせて、苦手なパターンをつぶしておきましょう。迷路探索ロジックの実装に進むのは、その後の課題です。

えみ

分かりました。まずは“5分間”しっかりと走れるようにします!!


北上

うん、頑張ってね!!


えみ

そうしたら、いよいよ迷路探索ですね。


北上

迷路探索ロジックはシミュレーターで作ってから、移植した方がいいよ。


えみ

探索は難しいんですか?


北上

そうだな〜。「拡張右手法」が比較的カンタンかな。主流は「足立法」だね。ネットで情報収集できるから、頑張って!!


えみ

えっ!? センパイ、迷路探索のプログラムも教えて……。


北上

何言ってるの!? アルゴリズムを自分で考えるのが楽しいんじゃないか! 今日から、ボクとえみちゃんはライバルだよ。


えみ

セ、センパイっ!! 今日の夕飯おごりますから……。ねっ!!


北上

あ、ホント? うれしいなぁ〜。遠慮なくごちそうになるよ。さーて、どっちのマイクロマウスが先にゴールできるかなぁ〜。楽しみだねー。


えみ

ちょっと、センパーイ〜!! えーん(涙)。





 マイクロマウス競技会は、2013年で34回目を迎えます。第1回大会から基本的なルールがほとんど変らずに続いている珍しいロボット競技会です。これだけ長い期間続いていても、技術の進歩に併せてロボットの性能が進化し、毎年記録が更新されています。

 今から競技会に参加して優勝を目指すのは、さすがにハードルが高い(高過ぎる)目標です。初級者だけでなく、10年以上参加している“マウサー”でも「優勝だけを目標にしたら、こんなにつらいコンテストはない」と語るほどです。

 マイクロマウス競技に参加する動機はさまざまでしょうが、全員に共通しているのは「競う相手は昨日の自分」という点です。自作マイクロマウスで参加する人も、市販キットでチャレンジするえみちゃんも、20年以上出場しているベテランマウサーも、昨日よりも速く走れるようになること、エンジニアとして一歩前進すること。それがマイクロマウス競技にチャレンジする意義です。

 マイクロマウス競技をもっと知りたい、迷路探索する方法を知りたいと思ったとき、ネットでも情報収集は可能ですが、大会を観戦して実際のマイクロマウスの走りを見ることをオススメします。そして、競技を終えて一息ついている参加者たちに話し掛けてみてください。

 本連載は今回で終了しますが、筆者チームは今後もマイクロマウス競技にチャレンジし続けます! いつか大会会場で皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。長期間お付き合いいただきありがとうございました! (連載完)

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