空港も港もないのにどうやって設置? 「島国」の太陽光チャレンジ : スマートグリッド (3/3 ページ)
太陽光発電システムを作り上げる場合、太陽電池は必要不可欠だが、それだけでは不十分だ。直流を交流に変換するパワーコンディショナーを用意しなければならない。さらに、トケラウのように全ての電力を太陽光でまかなおうとすると二次電池(蓄電池)も欠かせない。パワーコンディショナーと二次電池は、図5で緑色に描かれた建物の中に設置した。
建物内部の様子を紹介しよう。内部は細長いパワーコンディショナー室といくぶん広い蓄電池室の2つに分かれている(図12 、図13 、図14 )。電池、パワーコンディショナーとも1つの部品は大人1人が運べるサイズ、重量であるため、1つ1つ人力で設置していった。
図12 設置されたパワーコンディショナー 系統に接続されていない太陽光発電システム向けの品種を採用した。
図13 電池設置の様子 1台1台電池を設置していく。電解液は設置後にまとめて注入した。
図14 ずらりと並ぶ鉛蓄電池 完成直前の様子。まだ太陽光発電システムと接続されていない。
このようなシステムを3つの主要な島に合計3つ設置した。1カ所当たり約2カ月で図7の状態から、図15 や図16 のような完成に至った。
トケラウは南緯8〜9度に位置するため、発電効率を優先するなら設置角度は8〜9度が最適だ。しかしそうはなっていない。約20度である。これは、表面のホコリや小さなゴミを雨水がぬぐい落とす効果を考えてのことだ。
図15 完成した太陽光発電システム 太陽電池モジュールの向こうにはヤシの木を挟んで南太平洋が見えている。これほど海に近くても、運用期間中は塩害が生じないという。
図16 システムの全体像 パワーコンディショナーや鉛蓄電池を納めた建物と太陽電池モジュールを一望に収めたところ。必要最低限の土地造成にとどめていることが見て取れる。
トケラウの例から分かることは、燃料コスト、輸送コストが割高になりがちな国、地域には太陽光発電システムが向くということだ。送電網が未発達な地域にも適する。長大な送電網を建設、維持するよりも個別の太陽光発電の方が国全体で見ると安く付く国があるのだ。サハラ以南のアフリカ諸国やインド(関連記事 )、中国の無電化地域で太陽光発電システムが魅力的なのはそのためだ*1) 。
*1) 太陽光発電はかなり極端な環境でも利用できる。例えば、ベルギーの南極基地「Princess Elisabeth Antarctica」だ。南極大陸のへり、南緯72度という立地条件からは、太陽光発電の可能性は浮かび上がってこない。しかし、同基地では太陽光で必要な電力の4割をまかなうほどだ(残りの5割を風力、1割を太陽熱で得ている、関連記事 )。
太陽光150%の「国」が実現、南太平洋から
化石燃料の高騰に最も苦しんでいるのはどの国だろうか。島しょ国家、さらに主要交通路から外れた島しょ国家だ。赤道直下の南太平洋に浮かぶトケラウは、まさにこの問題に悩んでいた。同国がどのように150%の太陽光発電システムを導入したのかを紹介する。
小寺信良のEnergy Future(13):「元が取れない太陽電池」という神話
太陽電池を製造するには、高温でシリコン原料を溶かさなければならない。このときに大量の電力を使う。さらに太陽電池には寿命がある。このため、「太陽電池は元が取れない」という意見をよく耳にする。実際はどうなのか。火力発電や原子力発電とも比較した。
太陽光発電のコストダウンはどこまで可能か
世界最大の太陽光発電システム導入国であるドイツの事例から学べることは何か。長期にわたって計画的に固定価格買い取り制度を続けることで、太陽光発電システムの市場規模を拡大できるだけでなく、系統電力に匹敵するコストダウンを促せることだ。過去5年間の価格推移と、今後10年間の予測をドイツのBSW-Solarがまとめた。
太陽光発電が石油火力を代替するのはいつ?
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の予測(2009年)と、欧州の太陽電池業界団体European Photovoltaic Industry Association(EPIA)の予測(2011年)は大きく異なる。
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