化石燃料の高騰に最も苦しんでいるのはどの国だろうか。島しょ国家、さらに主要交通路から外れた島しょ国家だ。赤道直下の南太平洋に浮かぶトケラウは、まさにこの問題に悩んでいた。同国がどのように150%の太陽光発電システムを導入したのかを紹介する。
連載「世界の再生可能エネルギー」ではこれまで比較的規模の大きい国を取り上げてきた。中国やインド、米国、ウクライナである。今回はこれらの国とは異なる状況にある国を紹介する。
島しょ、特に離島は、現在のエネルギー問題の縮図であるともいえる。電力会社の系統からは切り離されており、島内には大規模な発電所が存在しない。外部の安定した電力源には頼れないということだ。このため、ディーゼル発電機の利用が広がっている。ディーゼル発電機は信頼性が高く、必要な電力をまかなう規模に拡大できるものの、燃料費がかさむ。離島であれば輸送費も掛かる。
そこで、風力発電システムや太陽光発電システムの導入が試みられており、地域によってはある程度定着している。再生可能エネルギー利用を島の魅力の1つとして打ち出す例も国内外に多い(関連記事「ビクトリア女王が好んだワイト島、英国最大の島が100%再生エネ化へ」)。
このような取り組みをいち早く推し進めたのが南太平洋の「国」*1)、トケラウだ。トケラウは南太平洋の複数の孤島からなる(図1)。トケラウ首相のFoua Toloa氏は、2011年12月に同国が世界初の太陽光発電国家となることを国際連合の場で表明。
この発言は1年以内に実現してしまった。トケラウの計画「Tokelau Renewable Energy Project」を担った太陽光発電システムの設計、施工企業、ニュージーランドPowerSmart Solarによれば、世界で初めて太陽光発電システムによって全電力をまかなうシステムが、2012年10月末に完成した。
*1) トケラウは国際連合がまとめた国際連合非自治地域リストに含まれている。同リストは国際連合が「植民地」だと定義付けた16の地域をまとめたものだ。現在のトケラウはニュージーランドの一地方ではあるが、独自の議会と政府を持ち、過去2回、ニュージーランドとの関係を変える目的の住民投票が実施された。
PowerSmart Solarとエネルギー関連のコンサルタント企業であるオーストラリアIT Power Australiaは、2012年6月中旬に整地済み土地に架台設置用のコンクリート打ち込みを開始した。トケラウは主な3つの環礁から成り立っている。最初にフォカオフォ環礁でシステム建設を開始、9週間の工期を経て、同8月上旬に稼働を開始した。9月中旬にはヌクノノ環礁で落成、10月末にアタフ環礁(図2)でシステムを完成させた。
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