中国に続いてインドの再生可能エネルギーを報告する。インドのエネルギー状況は中国と似ており、総量が不足している上に急速な需要増にも苦しんでいる。さらに多数の無電化地域が残る。水力、風力の増設に加えて、インド政府は2022年までに20GWという太陽光発電導入を計画する。
インドはエネルギー問題で苦しんでいる。デリー首都圏では、1日に数回の停電が起こることもあり*1)、国内には無電化地域が多数残る。
*1)電源開発(Jパワー)によれば、2006年3月時点で8%の供給不足と12%のピーク電力不足が継続しているという。この数字には無電化地域は含まれていない。
インドのエネルギー消費傾向は、前回紹介した中国と似ている。ただし、インドの1人当たりの1次エネルギー消費量は中国の3割にとどまっており、今後、経済発展に伴って状況がより悪化する方向にある。2009年時点のインドのGDP成長率は9.1%と高い。インド政府の第11次5カ年計画(2007〜2012年)によれば、経済成長を達成するために、70GWの新規電源開発が必要だという。これを例えば原子力発電でまかなおうとすると、規模を16倍に増やさなければならない。
インドの1次エネルギーバランス自体、生産量よりも消費量の方が大きい。2006年時点で生産量は3億3100万トン(石油換算)、消費量は4億800万トン。消費に占める固体燃料の比率は68%。液体燃料が23%だ。
インドは石炭大国だ。固体燃料68%の大半を石炭が占める。石炭の埋蔵量、産出量とも2009年時点で世界第3位であるにもかかわらず石炭輸入国でもあり、輸入量は世界第4位である。石炭が不足しているということだ。石油に頼ることもできない。インドは産油国であり、自給率が2割弱あるにもかかわらず、原油輸入量では世界第4位だ。
インドの発電量は世界第5位(8133億kWh、2007年)だ。83%が石炭火力を中心とする火力、15%が水力、2%が原子力だ。原子炉は20基あり、合計容量は4.4GWである。
石炭火力の増設が難しい状況にあるため、残る選択肢は、現在、石油火力に次ぐ位置にある天然ガス(LNG)発電所の増設や、水力発電所の新規建設、原子力発電所の拡張、再生可能エネルギーの導入になる。
天然ガスは既に火力発電の1割程度を担うが、ムンバイ(旧称:ボンベイ)沖などに資源が偏在しており輸入比率が高まっている。ウランの産出量は少ない。どちらも増設を計画しているが、長期的な調達・運用コストが上昇する傾向にあるため、大規模な導入に課題が残る。
そこで再生可能エネルギーに期待がかかる。
全エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を定めた。2009年10月、インド首相を中心とする委員会National Action Plan on Climate Changeは、2010年までに再生可能エネルギーの比率を5%に高め、その後10年間、毎年1ポイントずつ比率を上げていくという目標を打ち出した。
再生可能エネルギーに対するインドの投資額は2009年が32億米ドル、2010年が40億米ドルである。2010年の投資額は世界第10位に相当する。世界第1位の中国(544億米ドル)と比較すると1割弱程度の規模だが、インド政府の計画によれば今後の伸びが期待できる。
インドの再生可能エネルギーの規模は、水力が大きく風力が続く。今後は風力と太陽エネルギーの比率が高まる見込みだ。
インドの水力資源は膨大であり、2003年には「50000MW水力開発イニシアチブ」を発表している。これが実現できれば、2012年までに必要な70GWのうち、50GWを満たすことができる。ただし、地域的な偏りがあるため、水力だけでは不十分だ。具体的にはインド北部(ヒマラヤ山地)に偏在しており、全土での利用は難しい*2)。
*2)例えば、電力の大消費地であるムンバイとヒマラヤ山地との直線距離は1300kmある。これは青森−下関間の直線距離よりも長い。逆にヒマラヤ山地に近い地方は有利である。例えば、インド北東部アッサム地方に位置するメガラヤ州は水力発電により、2001年まで電力をほぼ自給していた。
風力発電の累計導入量は2010年末時点で13.1GW。世界全体の7%を占め、中国、米国、ドイツ、スペインに次いで世界第5位*3)だ。導入の勢いが加速しており、2010年の導入量(2.1GW)は中国、米国に次いで、世界第3位に及ぶ(図1)。
*3)Global Wind Statistics 2010
インドは季節風であるモンスーンの支配下にあり、インド洋に面した東海岸が風力発電の好適地である。インド最大の風力発電の集積地であるタミル・ナードゥ州も東海岸に位置する。同州の風力発電量の割合は全国の4割以上に達しており、合計出力は6GWだ。
インドの太陽光発電は芽が出たばかりの状態だ。それにもかかわらず独特の課題を抱えている。どのような課題だろうか。
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