空港も港もないのにどうやって設置? 「島国」の太陽光チャレンジスマートグリッド(2/3 ページ)

» 2012年12月28日 10時30分 公開
[畑陽一郎MONOist]

まずは適地を見つける

 トケラウの例のように系統に接続されていない太陽光発電システムでは、満たすべき電力需要量と、気候条件から産出した年間予想発電量に従って導入規模を決める。その後、詳細な立地条件を詰めていく。

 ここに課題があった。なぜならトケラウの国土は3つの主要な島の面積を合計しても約10km2と狭いからだ。さらに、それぞれの島は中央に大きな礁湖を抱え、陸地は幅が細いドーナツ型をしている。加えて海面からの高さが最大でも5mしかない(図5)。

 ちょうど、ごく浅い水に沈めた指輪の上に太陽光発電システムを作るようなものだ。それでも3つの島にそれぞれ適地が見つかり、建設が始まった。

図5 太陽光発電システムの設置予想図 図左が外洋(南太平洋)、図右が環礁中央に広がる礁湖。周囲には既存の家屋も白く見えている。緑色の家屋内は2室に分かれており、それぞれパワーコンディショナーと蓄電池を設置する。2番目に建設したヌクノノ環礁の完成予想ビデオより。

 太陽光発電システムに必要な資材はセメントから架台、ケーブル、太陽光発電モジュールに至るまで全て輸入に頼った。トケラウには工業基盤がないからだ。ニュージーランドから外洋航行が可能な貨物船で運び、沖合でハシケに移し替え、環礁を掘って作った小さな港に陸揚げする(図6)。太陽光発電システムに必要な部材は火力発電や水力発電と比較して大型のものが少ないため、山岳地帯やトケラウのような離島でも設置しやすいということだ。

 トケラウの道路は幅が狭く、舗装もされていないが、太陽光発電システムに必要な資材は小分けにして輸送できる。輸送距離も短かったため、陸上輸送には課題がなかったという。

図6 資材を陸揚げする様子 フォカオフォ環礁で、太陽電池モジュールを支える架台の部品を陸揚げしているところ。

 架台の土台部分の工事では、南太平洋だからといって特別な手順はない。建設予定地を平たんになるようにならし、土台部分を掘り下げて木枠と鉄筋を設置し、コンクリートを打ち込む(図7図8図9)。ただし、トケラウは熱帯性の暴風雨(サイクロン)に襲われることがあるため、しっかりした土台と架台が必要だ。

図7 太陽電池モジュール設置の前に まずは整地、次に生コン作り。
図8 架台の土台を作り込む 生コンを打ち込む木枠と鉄筋を配置しているところ。
図9 コンクリートの土台が完成 これで太陽電池モジュールの1列分(1ストリング)の土台が完成した。

 設置するモジュールの枚数分のコンクリート製土台が出来上がったら、次は、土台の上に太陽電池モジュールを載せる架台を設置していく(図10図11)。

図10 架台工事の様子 コンクリートの土台からわずかに飛び出した金具に架台を接続し組み立てていく。赤道直下、炎天下の作業だ。
図11 架台工事と太陽電池モジュールの設置 設置工事のタイムラプスビデオから。コンクリートの土台が完成し、架台と太陽電池モジュールの取り付けを開始してから土日をはさんで7日経過したところ。1日10時間作業して、3ストリング分の設置が完了した。

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