(a)データが無い場合の管理限界線の扱い方
管理図には、必ず、UCL、LCLを書き入れなければなりません。初めて管理図を設定する場合で、データが無い場合には、目標値としての処置限界を取りあえず記入して管理限界線と同じ扱いとします。これによって工程の異常原因を取り除くようにしなければなりません。
(b)X管理図を規格値で管理する場合
X−R管理図のX管理図において、片側規格(例えば、15kg以上とか、10mA以下など)のときは、LCLかUCLの一方のみを設定しても差し支えありません。もちろん、上下の幅として管理した方が望ましい場合は、必ず両側(LCL、UCL)の管理限界を入れて管理するようにします。
(c)LCLの省略
P、Pn、C、uの各管理図においては、LCLを省略できます。管理図へ管理限界線(LCL、UCL)を記入するのは、異常の発生に対するアクションと同じく、製造部門と担当の生産技術部門となります。
現場の管理責任者は、管理図の運用に関して、マンネリ化やなれ合いに陥りやすいので、担当部門の上位管理者やスタッフ部門が、監査と助言を実施しなければなりません。監査や助言の担当は、製造部門の課長職以上と担当の生産技術部門が行うのが一般的です。
管理図が規定通りに運用され、効果を挙げているかどうか定期的に見直すことが必要です。使いづらいとか、効果がないものなどをそのままにしておいてはいけません。管理図全体への不信感だけが徐々に芽生えて、管理図による管理は効果的でないということになってしまい、管理図そのものが排除されてしまうというような最悪の事態を招いてしまうことが多々あります。
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先ほどの「管理図による異常点の見つけ方」でも説明しましたが、管理図は、工程が安定状態(統計的管理状態:通常のばらつきを持つ状態)にあるか、異常な状態(通常のばらつきの範囲を超えている状態)であるかを判別するツールです。そして、管理図で、製造工程に異常が発生したことが分かったら、直ちにその原因を探し出して必ず排除しなければなりません。
基本的に、管理図は、工程能力を管理するものであって、製品の品質を直接管理するものではありません。管理図の管理限界線と品質特性値の打点の動きなどによって、工程の異常やその兆候を検知して、正常な状態に戻すべく何らかのアクションを行う――このことを正しく理解しておかなければなりません。「管理図」を大いに活用して、その素晴らしい効果を実感していただきたいと思います。
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MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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