前回解説した「X−R管理図」「P管理図」と今回の「C管理図」のいずれも、管理限界線をはみ出した打点があれば、当然のことながら品質に異常が起こっています。しかし、管理図による品質管理では、はみだした打点がなくても異常の兆候管理を行わなければなりません。そこで、異常点の見つけ方や異常の兆候管理、管理図活用上の注意点などについて説明します。
管理図上に現れるばらつきには、安定な状態で発生する何の因果関係もない“偶然原因”のばらつきと、工程に何らかの異常(通常とは違っている)事態が起きたために発生する “異常原因”によるばらつきがあります。“異常原因”によるばらつきは、原因が究明できるばらつきですので、これを見逃さず、工程に適切な処置を取り、再発を防止していかなければなりません。管理図は、このように工程が安定状態か、異常が発生しているのかを管理していくツールといえます。
管理図により工程を管理していくとき、管理図の点の動きに注意していると、工程の異常な状態の兆候を予防的に発見することができます。管理限界線の外側に点が打たれたときにアクション(対策)を取らなければならないことは容易に理解できますが、それ以上の使い方がなされていない残念なケースが多く見受けられます。そこで、本節では、管理図の点の並び方から工程の異常状態を知る方法について説明します。
次のような状態は、正常な点の動きを示しています。つまり、“偶然原因”の範囲内で点がばらついています。
(a)打点された点の動きに特別な規則性や特徴が認められない。
(b)多くの点が中心線(CL)の近くにある。
(c)少数の点が管理限界線(LCL、UCL)の近くに散らばっている。
(d)管理限界線(±3σ)を超える点がない(線上に位置する点は超えていないものとする)。
次のような状態が、異常な点の動きの特徴です。このような内容が管理図に現れたときは、工程に何らかの変化が起こっていますので、直ちに原因を究明しなければなりません。
(a)点が広くばらつく。中心線の両側にバランスがとれていない。
(b) 点があまり広くばらついていなくても、「(1)正常な点の動きの性質」の1つでも欠けているときは、常に異常な点の動きといえる。
例えば、中心線(CL)の近くに点がほとんど無いときは、「分布が混じった状態」といわれる異常な点の動きである場合が多く、また、管理限界線(LCL、UCL)の近くに点が無いときは、「分布が重なった状態」といわれる異常な点の動きを現しています。また、管理限界線の外に点があるときは、不安定な状態であり、異常な点の動きといえます。
管理図上の点が、中心線(CL)に対して、一方の側に連続して現れた場合に、これを“連(れん)”と呼びます(図2)。例えば、点が中心線の上側にあり、次の点が同じく中心線の上側にきたときを“長さ1の連”と表現をします。
中心線より一方の側に連続して点が現れる連の存在から、製造工程に異常が発生したと考えることができます。管理図に記入された点が徐々に上昇したり、あるいは下降したりするような傾向がある場合や、点が度々(幾度も)管理限界に接近して現れるような場合も、異常発生の兆候と見なして、原因を究明しなければなりません。そこで、以下の基準を決めてアクションを起こすことによって、異常発生の兆候に対して対処しようというわけです。
連の長さが“7”未満でも、CLの一方の側に点が続けて出現するような場合は管理状態にあるとはいえません(図3)。何らかのアクションを起こす必要があります。
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