日産自動車が、「CEATEC JAPAN 2012」で公開している、自動運転機能を搭載する電気自動車(EV)「NSC-2015」。自動運転に必要な周辺認識と車両制御を行うために、PC10台分に相当する処理装置を搭載している。
日産自動車が、「CEATEC JAPAN 2012」(2012年10月2〜6日、幕張メッセ)で公開している自動運転機能を搭載する電気自動車(EV)「NSC-2015」。このNSC-2015は、2015〜2016年ごろに実現可能な機能を、現時点で出そろっている要素技術を組み合わせて具現化したものだ。NSCは、Nissan Smart Carの略であり、数字の2015は、2015年ごろの実用化を目指している技術が搭載されていることを示している。
展示会場では、幕張メッセの1ホールから2ホールにかけて広がる広大なスペースを使って、NSC-2015のデモンストレーションを披露している。
このデモは、NSC-2015のドライバーが、スマートフォンと自動車をつなげるクラリオンのクラウドプラットフォーム「Smart Access」を使って、目的地へのルート設定をして運転するところから始まる。
目的地の建物の入り口(を模したスペース内の位置)に到着したドライバーは、そこで降車する。この建物の駐車場は、目的地の建物から少し遠く離れた位置にある。そこでドライバーはその場で、NSC-2015が駐車場まで自動運転で移動してから、空きスペースに自動駐車するように、スマートフォンで設定する。この設定を送信すると同時に、NSC-2015に運転の権利が委譲され、NSC-2015は自動運転で走行し、駐車を行う。
駐車後は、ヘッドランプなどを消して停車状態になるが、車載カメラを使ったセキュリティ機能が常に動作している。もし、不審者が近づいて、NSC-2015に触れるなどするとドライバーのスマートフォンに通報する。またドライバーは、スマートフォンを使って、NSC-2015の車載カメラで撮影した映像をリアルタイムで確認することができる。
そして、建物内での用事を済ませたドライバーが、スマートフォンでNSC-2015に指示を与えれば、NSC-2015は自動運転で建物の入り口まで迎えに来るという流れである。
NSC-2015の最大の特徴は、自動運転と自動駐車であろう。これらの機能を実現しているのが、Smart Accessが提供する目的地の敷地内や駐車場内の地図情報、駐車場の満空情報や空きスペース情報、そして4個の車載カメラで車両周辺の映像を映し出す「アラウンドビューモニター」である。NSC-2015のアラウンドビューモニターは、「エルグランド」などに搭載されている現行システムの4倍以上となる、130万画素の車載カメラを用いている。
ただし、アラウンドビューモニターを搭載するだけでは、車両周辺の映像を取得できるだけにすぎない。NSC-2015が自動運転や自動駐車を行うには、目的地の敷地内や駐車場内の地図情報と、車両周辺の映像から抽出した白線などの情報を統合して自車位置を認識し、その自車位置から目的地や駐車スペースまで走行するためのステアリングやアクセル、ブレーキなどの制御を行うための処理装置が必要になる。日産自動車の担当者によれば、「NSC-2015には、PC10台分に相当する処理能力を持つ装置を搭載している。現時点では大型の処理装置だが、2015年には半導体技術の進化により1チップ化できるのではなかろうか」という。
NSC-2015は、LTEによる高速通信も特徴の1つになっている。この高速通信が生かされているのが車載カメラで撮影した映像をリアルタイムで確認できる機能だ。同担当者は、「LTEを使わなければ、リアルタイムで車載カメラの映像をドライバーのスマートフォンに送ることはできない」と説明する。
自動運転するNSC-2015のベース車がEVのリーフであることにも意味がある。今回の自動運転と自動駐車の機能は、私有地の敷地内や駐車場内で利用することを想定している。このため、一定範囲内の低い速度で走行することになる。「EVは、一般的な自動変速機搭載のガソリンエンジン車よりも、低速かつ定速の走行を行いやすい。今回のように駐車場などの限定された場所で自動運転する機能は、EVならではのものになるのではないかと考えている」(同担当者)。
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