しかし、既に量産が始まっている6インチ(150mm)サイズのSiCウェーハが安定供給されるようになれば、SiCデバイスのチップコストをかなり低減できる見込みだ。
鶴田氏は、6インチSiCウェーハが安定供給されれば、そのコストが8インチSiウェーハの2倍程度に収まると想定している。そして、先ほどと同様に7mm角のSiCデバイスのチップの良品率が80%であれば、250個のチップが得られる計算になる。そして、チップ1個当たりのコストは、Siデバイスの1.2倍まで抑えられる。表1に、これらのコスト比較をまとめた。
ウェーハの種類とサイズ | 8インチSiウェーハ | 4インチSiCウェーハ | 6インチSiCウェーハ |
---|---|---|---|
ウェーハコスト | 1 | 2〜3 | 2 |
チップサイズ | 12mm角 | 7mm角 | 7mm角 |
チップ数 | 150個 | 100個 | 250個 |
チップコスト | 1 | 3〜4.5 | 1.2 |
表1 SiCデバイスとSiデバイスのコスト比較(デンソーの鶴田和弘氏の資料を基に作成) |
ただし、ここで問題になるのが80%という良品率である。現在量産されているSiCウェーハには、非常に微細な欠陥が存在しており、この欠陥密度によって良品率が左右されてしまうのである。ここまで例として挙げてきた7mm角のSiCデバイスは、EVやHEVのインバータに必要な電流容量200Aクラスのものだ。しかし、この7mm角のSiCデバイスで、80%という良品率を得るには、極めて欠陥密度が低い(=高品質の)SiCウェーハでなければならない。
6インチSiCウェーハの安定供給と高品質化。EVやHEVのインバータにSiCデバイスを採用するには、まずこれらの条件がクリアされる必要がありそうだ。
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