これからの電車は電気を消費するだけではない。自ら発電するエコロジカルな技術をJR東日本が続々と実現しつつある。
東日本旅客鉄道(JR東日本)は2012年5月8日、鉄道電力システムへのスマートグリッド技術の適用を発表した。
今回の発表では、電車の回生エネルギー利用や電力制御技術の検証、駅構内消費電力の全量自然エネルギー利用化に向けた取り組みなどが盛り込まれている。
JR東日本ではまず、2012年5月末から青梅線古里変電所で、架線と蓄電池を直結した簡易な電力貯蔵装置の試験を実施する。電車の減速時に発生する回生エネルギーを電池に充電し、必要に応じで加速中の電車に給電する仕組みだ。試験で使用する蓄電池はニッケル水素電池。
この試験の成果を受け、2012年度下期に青梅線拝島変電所にリチウムイオン電池を使用した電力貯蔵装置を設置し、これを実現する予定だ。
青梅線での取り組みは同一回路内での充放電が前提だ。同一回路内であれば、送電は比較的容易だが、別回路への電力供給には、双方の回路の電流を調整する必要がある。
この課題を解決するため、2013年度下期には常磐線牛久き電区分所に電力融通装置(RPC)を設置する。
両隣の変電所の電流情報を牛久き電区分所に送信し、電力融通装置で制御する計画だ。電流情報を参照しながら、必要に応じて隣の電気回路に安全に送電する仕組みを構築する。
また、線路沿線の用地を利用した自然エネルギー発電も検討している。まず、東北本線平泉駅において、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「ゼロエミッションステーション」を構築する。晴天の場合には、駅で消費する全電力を自然エネルギーでまかなえる見込みだ。2012年6月末には実現するという(詳細は関連記事参照)。
このほか、2012年度下期には沿線の鉄道用地で発電した電力を遠方に送電する電力系統制御技術を確立するために、模擬設備で試験を実施するとしている。
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