EDAツール活用法を知る連載。今回は回路を基に電子部品を配置し、プリント基板を設計するEDAツールを紹介
前回の記事では、アナログ回路をコンピュータ上で仮想的に動作させるアナログ回路シミュレータについて紹介しました。アナログ回路シミュレータ上で動作検証を行うことで、実機試作の回数が減り、開発期間やコストの削減につながります。今回は、完成した回路を基に集積回路(LSI)や抵抗器、コンデンサといった電子部品の配置/配線を行い、プリント基板を設計するEDAツールを紹介します。
プリント基板とは、電気製品や電子機器に使われる板状の部品のことです。プリント板、プリント配線板、PCB(Printed Circuit Board)、PWB(Printed Wiring Board)と呼ばれることもあります。プリント基板は、集積回路(LSI)などの電子部品が搭載され、電子部品同士が配線されて初めて電子回路として動作します。パソコンや携帯電話をはじめとする電子機器において必要不可欠な部品の1つです。
用途により形や大きさや材質はさまざまですが、絶縁体であるエポキシ樹脂の板の表面に導体である銅箔(はく)を貼り付けた構造が一般的です。この銅箔を部分的に化学的技術で溶かし取り除くことで配線を形成し回路を構成します。電子部品のリードと銅箔をはんだ付けすることで物理的に固定し、さらに電気的な接続を行います。
回路設計者が作成した回路図はあくまでも「論理的」なもので、電子機器の部品としての形や大きさは規定されていません。回路図だけでは部品を作ることはできないので、部品であるプリント基板を設計する必要があるのです。また、回路図のとおりプリント基板を動作させるには、プリント基板をどのように設計するかが重要になります。
プリント基板の設計とは、具体的には板の銅箔の形状や穴の位置、大きさなどを決め、電子部品が取り付けられるようにすることです。さらにそれらが回路図どおりに接続され、回路として正しく動作するように設計します。プリント基板を正しく動作させるためにはさまざまな制約があり、プリント基板設計者はこの制約をクリアするために日々苦労しています。
1980年代にプリント基板の設計に特化したEDAツールとしてプリント基板設計CADが登場しました。プリント基板設計CADを使うことで、プリント基板設計者は紙と鉛筆の書いては消しての繰り返しから解放されました。加えて、さまざまな便利な機能を活用することで、手書きの設計とは比べものにならないほど設計作業の時間を短縮し設計品質を向上させることも実現しました。初期のCADはソフトウェア上の問題(バグ)も多く、またハードウェアも今日のパソコンなどとは比較にならないほど高価でありながら機能は貧弱なものでしたが、それでも、プリント基板設計においては非常に画期的なものでした。
近年、電子機器の小型軽量化が進みプリント基板の複雑化/高密度化、回路の高速化/大容量化、開発期間短縮、コスト削減などの要求が高まっています。プリント基板設計CADも改良や新機能追加が行われてきました。今日、CADを使わずにこれらの要求に応えるのは事実上不可能といえます。また、手書きの設計では他社との競争に勝ち残ることができないのはいうまでもありません。
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