EDAツール活用法を知る連載。今回はEDAツールを用いたプリント基板のEMI対策を解説する
今回は、EDAツールを用いたプリント基板のEMI(放射ノイズ)対策を解説します。第4回「SI/PI編」の後編と考えてください。
多くの電子機器において、主なEMIの発生源はプリント基板にあり、またEMI対策の容易さや対策費用の面からも、プリント基板でのEMI対策/EMC設計は重要となっています。また、SI/PIと異なりEMI対策の厄介な点は動作上問題がないだけでなく、その機器の種類(民生品、産業用、医療機器、車載など)に応じた規格をクリアしなければならないことです。ここでは、各種EMIシミュレータの特徴と、EMI対策ツールについてその活用法を紹介いたします。
EMIシミュレータというとこちらを思い浮かべる人も多いかと思います。代表的な電磁界シミュレータでは、3次元空間にメッシュを切り、マックスウェル方程式を近似解法することで電磁界の分布などをシミュレーションします。特定の配線パターン/特定のプレーン(1ネット)の解析には向いていますが、規模の大きなもの(複数ネット)や、基板全体のEMI解析には向きません。
電磁界シミュレータに準じるものですが、配線パターン/プレーンをメッシュ状に切り、SPICEモデルを抽出して解析するタイプです。一般的な電磁界シミュレータよりは高速です。
第4回で紹介したSIシミュレータと同様に、IBISモデルまたはSPICEモデルを用い伝送線路の電流波形を計算します。その電流波形と配線パターン(アンテナモデル)から、放射ノイズレベルを算出します。この方法はどの信号ネットに問題があるかを検出するのに向いており、ディファレンシャルモードのEMIをシミュレーションします。一般にコモンモードノイズがEMIの主な原因とされているため、ディファレンシャルモードノイズを軽視する風潮もありますが、ディファレンシャルモードノイズがコモンモードノイズの原因となりますので、対策ツールとして有効です。
EMIシミュレータとは異なりますが、EMI対策を行うためのツールです。あらかじめ決められた、EMI(EMC)デザインルールに対し、プリント基板の配線や部品配置がルールどおり設計されているかチェックします。すべてのネットを高速にチェックすることができます。ルールやそのパラメータ設定値の妥当性が重要となります。
現在、市販されているEMIシミュレータでは、次のような問題があります。
(1)製品レベルの基板の実測結果とシミュレーション結果は、ほとんどの場合一致しません。ただし、非常に単純な実験基板であれば、実測とシミュレーションは、おおむね一致します。
(2)納期が限られた基板設計期間では、実測とシミュレーションの一致のために、多くの時間をかけられません。専門の技術者が時間をかけて詳細にシミュレーションを行えば精度は上がるかもしれませんが、時間、費用、効果を踏まえると、短納期の実務設計への活用は困難です。電磁界シミュレータの活用法としては、解析結果をルール化し、実設計に適用する方法や、共振シミュレーションに用いることが考えられます。
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