もはや必須! プリント基板のノイズ解析〜EMI編〜電気回路設計者向け 実践! EDAツール活用法(6)(2/2 ページ)

» 2010年09月09日 12時00分 公開
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3. 対策ツールによる実務設計での活用

 従来のEMIシミュレータを用いたEMI対策(EMC設計)より、むしろ実務設計では、対策ツールを用いた方が現実的です。また、EMI(電磁界)シミュレータを使いこなすためには、電磁気学などのある程度のバックグランドも必要ですが、ルールチェッカなどの対策ツールでは、それほど高度な知識がなくても使いこなせます。ここでは対策ツールとしてNEC情報システムズのDEMITASNXを用いた事例を、紹介します。

 DEMITASNXは、「EMI抑制設計支援ツール」と呼ばれるもので、 EMIルールチェッカ+プレーン共振解析ツールの2つから構成されています。この2つのツールにより、プリント基板でのEMI問題の大部分を解決することができます。

 DEMITASNXのコンセプトは、「基板として危険な場所を短時間で検出し、対策の検討を簡単に行う」というものです。実製品レベルの実測と一致することを目的とするのではなく、EMIの原因を設計の初期段階に短時間に、かつ、できるだけ多くつぶしておくことを目的としています。 実測との誤差が多少あっても、対策の方向性は正しいものが得られます。

 その結果、EMIの原因の多くを解消することができるため、基板からの放射ノイズの低減につながります。実際の基板で、配線前のルールチェックと配線後のルールチェック結果の例を示します。DEMITASNXでは、13種のルールについてチェックします。また、チェックパラメータは、デフォルトですでに実測に基づいた妥当な値がセットされています。さらに問題個所には変更方法のアドバイスが表示されます。

photo 画像1 部品配置段階(パターニング前段階)でのチェック、放射電界チェック

photo 画像2 配線後のEMIルールチェック(変更のアドバイス)、差動パターンチェック

 プレーン共振シミュレーションは、SPICE抽出系のシミュレータです。コモンモードEMIの発生源となる、プレーン共振の分布強度をシミュレーションします。対策には、バイパスコンデンサ(以下、パスコン)またはスナバ素子を追加します。図3に同じ基板でのプレーン共振の例を示します。

photo 画像3 共振分布(左)と励振源に対する最大電圧(右)

4. プリント基板における具体的な放射ノイズ対策

 放射ノイズの3要素として、ノイズの発生源(エネルギー源)、伝送系(線路/ケーブル)、アンテナ(ノイズを放射する部分)があります。以下に、具体的な放射ノイズ対策方法について記します。ここに書かれている対策が、必ずしもすべてではありませんし、ルールチェッカにはない(なじまない)項目も、交ざっています。

発生源に関するもの

 放射ノイズのレベルは、信号や電源の電圧ではなく、電流に比例します。また、周波数または周波数の2乗に比例します。従って下記のような方法でこれらの要素の値を下げることが、基本的な対策となります。

  • デバイスの高調波成分を下げる
  • 信号波形整形(シグナルインテグリティ対策:VIA数、トポロジ、終端など)
  • ピーク電流値を下げる
  • スペクトラム拡散デバイスを用いる
  • パスコン(デカップリングコンデンサ)の配置

伝送系に関するもの

 ノイズとなる高調波成分を伝搬させないことを目的としています。電源系に対策する場合、信号系に対策する場合があります。

  • ノイズフィルタ(2端子、3端子など)、コモンモードチョーク
  • 信号波形整形(シグナルインテグリティ)用ダンピング抵抗

アンテナ化

 プリント基板上の配線パターンや電源プレーンなどが、意図せずノイズを放射するアンテナとなることがあります。このアンテナの効率を下げることで対策とします。

  • プレーン共振の防止
  • リターンパスの確保(GV貫通パターン対策など含みます)
  • 高速信号配線の短縮/引き回し方法
  • 高速信号配線の内層化
  • コネクタ部のプレーン処理

5. まとめ

 EMI対策では、「これだけやっておけば問題ない」といった決め手のようなものは、なかなかありません。ケースバイケースで条件やパラメータは変わってしまいます。EMIルールチェッカやEMIシミュレータにしても、単一のツールで十分とはいえません(近いものがDEMITASNXです)。いくつかのツールを組み合わせることで、より確度の高いEMI対策が可能となります(DEMITASNX+SIツール、またはDEMITASNX+電磁界ツール、またはDEMITASNX+伝送線路型EMIツールなど)。

 また、ノウハウも含めて、EMI対策ルールとして、設計ルールを決めておくと、よりレベルの高い設計が可能となります。

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