EDAツール活用法を知る連載。今回は回路設計からプリント基板設計へ展開したときの問題とその解決法を紹介
前回の記事では、プリント基板と基板設計CADについて紹介しました。実際の回路を具体的な形にしたものがプリント基板であり、普段、わたしたちが接する電気製品のほぼすべてのものに使われているものだとお分かりいただけたと思います。回路設計では部品と部品を線でつなぎ、デジタルやアナログ回路をシミュレータで解析し、プリント基板を作成するというのが最もシンプルな設計のスタイルですが、この部品と部品を線でつなぐという部分に多くの問題が潜んでいます。今回は回路設計(論理設計)からプリント基板設計(物理設計)へ作業を展開したときに、「どのような問題が発生し、どのように解決していくのか?」を、デジタル基板設計を例にして紹介します。
回路図面を実際の製品(物理的なモノ)にしたときには、さまざまな問題が発生します。回路図面上、電源は3.3V、グランドは0Vそして配線はゼロΩの抵抗となっていてもプリント基板上では、実際の回路動作環境により、これらの値が異なったり変動したりするからです。では、どのような現象が実際に起こっているのでしょうか? ここでは以下のように現象面から簡単に説明します。
プリント基板の世界では、これらをすべてノイズと呼び、これらをシミュレーションすることをプリント基板(ノイズ)解析と呼んでいます。
一般に「信号品質」と訳されますが、部品から部品へ信号を正しく伝送することを保証するものです。信号品質に影響を与える最も一般的な要因はデバイスや線路のインピーダンスの不一致から誘発される反射やリンギングという現象です。そのほかにクロストークや電源・グラウンドバウンスという現象もあります。
例えば、図1のようにドライバからレシーバへ信号が伝送されるとき、信号の動作周波数(転送レート)が20MHz以下とか比較的遅い場合はレシーバ端の波形は大きな歪みがなく、タイミングも同じに見えますが、信号の周波数が50MHzを超えるようなものになってくると、波形は歪み、タイミングも一致しません。
このような現象について、もう少し具体的に掘り下げてみましょう。
前述した「信号の動作周波数」ですが、実は動作周波数自体が問題なのではなく、波形の持つ周波数成分が問題になります。通常、見ているのは時間軸をベースとした方形波ですが、周波数分解してみるとさまざまな周波数成分から成り立っていることが分かります。一般的に動作周波数が速い信号は立ち上がり時間も速く、そこには高周波成分が多く含まれることになります。そして、そのような電流が配線パターンを通ると考えましょう。配線パターンは銅箔(はく)でできているので、そこに電流が流れるときには図2のようにRLCの回路を通ると考えられます。このように話を進めるとなんとなく分かったような気分になりませんか? つまり、実際のモノづくりではプリント基板も1つの回路として考える必要があるのです。
う〜ん。何やら難しい話になってきたな〜という感じでしょうか? それでは、もう少し方向性を変えてみましょう。図3をご覧ください。
信号の流れを水の流れに例えています。ダムから放出された水は川を通り消費され、水が通る川幅や経路は一定ではないと考えます。川幅や経路の分岐点では、川の流れの速度が変わったり、水が跳ね返ったり(反射)とさまざまな変化が起こります。このような変化が、先に示した波形の歪みに対する考え方と一致します。ダムからの放水量や速度が速ければ、川で起こる現象も顕著になったり、逆にあまり変化しなかったりします。SIも同様のことがいえます。
そのほか、隣接する配線から電磁的影響により波形が歪むクロストーク(図4)、ドライバがスイッチしたときの電圧効果により電源/グランドが揺れる電源/グランドバウンスなどを考慮し、最終的な信号の成型を目指すことになります。イメージはわきましたか?
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