図5はDDR2の線路の設計事例です。LSIやメモリなどのデバイスを使用する際には仕様書というものが存在します。仕様書にはプリント基板設計のガイドラインがある場合とない場合がありますが、最終的に信号のタイミングを合わせて回路を動作させるという目的は変わりません。ここでは仕様書とPCBレイアウト(プリント基板上での配置配線イメージをこう呼ぶ)のイメージからトポロジーと呼ばれる配線形態を作成しシミュレーションを実行しています。このトポロジーには配線のインピーダンスや長さ、ターミネーションなどの情報が含まれており、PCBレイアウトを実施する前に検証しておくと便利です。最適な配線形態を決定し、プリント基板設計CADに情報を伝達し、配置と配線を実行するというスタイルが定着しつつあります(PCBレイアウト終了後の解析や測定で十分という場合もあります)。
プリント基板解析についてイメージいただけたところで、もう少し話を設計現場に近づけましょう。プリント基板の回路イメージと解析ですが、プリント基板の線路をモデリングし、RLCの回路として表すにはフィールドソルバというソフトウェアで配線されている条件(材料や線幅など)で電磁界解析を行い、それをRLCの等価回路に置き換える手法を用います。もしくは、近似計算式で計算によって求めますが、いずれの手法でも理想グラウンド(基準ゼロの点)が必要になります。また、入力される信号波形も、ある条件(電源:3.3V、GND:0Vなど)により導かれた結果です。電源とグラウンドを固定条件として解析しているにほかなりません。しかし、実際の回路では電源、グラウンドは変化します。もうお分かりですよね。両方の解析をしてみないと回路が安定しているとはいえません。この「電源品質」をPI(パワーインテグリティ)と呼んで、SIとは別に検討する項目として切り分けられています。
電源やグラウンドも線路と同じようにRLCの回路に置き換えて解析します。解析項目としては以下のようなものがあります。
電源の安定性の評価は周波数軸をベースとしたインピーダンス特性で行います。一般的に、電源を安定化させるにはコンデンサを配置しますが、コンデンサには周波数特性が存在し、時間軸特性ではあまり効率的な検討ができないためです。図7は、SIの例と同じプリント基板で電源解析をしたものです。
特性を確認し、電源・グラウンドプレーンを編集したり、コンデンサなどの部品を追加変更しながら、インピーダンス特性が最適になるように検討していきます。
難しいことはさておき、モノづくりをするときにはプリント基板自体を回路の1つとして考えなければなりません。それにより設計が変わってくるはずです。アナログ回路設計でも同様に、プリント基板配線を考慮しなかったがために誤動作することがあります。考慮すべきはプリント基板の「線路」と「電源」です。関連して、回路が動作したときに発生する放射ノイズ(EMI)も考慮しなければなりません。EMIノイズには規格があり、製品を販売するうえで必須の項目となります。EMIノイズについては次回に掲載しますので、今回の内容と併せ学習してみてください。きっと設計ライフが変わるはずです。
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