日立ハイテクは世界シェア70%の測長SEMに代表される半導体検査装置を新拠点の「マリンサイト」を開設した。マリンサイトは「Digital&Clean」のコンセプトの下で自動化やグリーン化を進めている。
今や微細化のレベルが2nmに届こうとしている半導体だが、その製造プロセスにはさまざまな装置が用いられている。感光材であるフォトレジストの塗布/現像を行うコーター/デベロッパー、フォトレジストに回路パターンを焼き付ける露光装置、回路パターンに合わせてシリコンウエハーを加工するエッチング装置などさまざまあるが、これらの現像や加工が設計通りに行われていることを確認するための半導体検査装置も重要な役割を果たしている。
半導体検査装置の中でも、電子顕微鏡の一種であるSEM(走査電子顕微鏡)の技術を基に回路パターンの寸法を計測するのに用いられるのが測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension SEM)だ。そして、この測長SEMで世界シェア70%を誇るのが日立ハイテクである。
日立ハイテクの測長SEMは、日立製作所(以下、日立)の電子顕微鏡事業から派生した製品である。2001年に日立ハイテク(当時の社名は日立ハイテクノロジーズ)が発足する際に日立から事業移管され、その後も成長を続けて現在は日立ハイテクを支える大きな柱となっている。
なお、測長SEMを手掛ける日立ハイテクのナノテクノロジーソリューション事業では、光学技術を用いた暗視野式ウエハー欠陥検査装置や、欠陥検査装置の情報を基により詳細の評価を行うレビューSEMなどの半導体検査装置を展開している。また、笠戸地区(山口県下松市)で開発から量産までを行うエッチング装置も有力な製品だ。
日立ハイテクの測長SEMの研究開発や量産は、日立時代から電子顕微鏡事業と同じ那珂地区(茨城県ひたちなか市)で行われてきた。しかし、半導体の微細化が進む中で、測長SEMをはじめとした日立ハイテクが展開する各種半導体検査装置の需要の高まりに対応するため、生産能力の拡充と開発力の強化に向けた新たな拠点が必要になっていた。
そこで、那珂地区から約8kmという近郊で同じ茨城県ひたちなか市内にある常陸那珂工業団地内に新拠点を建設することになった。海岸から2kmと海に臨む位置にあることから「マリンサイト」と名付けられた新拠点は、2021年3月に完成した。日立ハイテク ナノテクノロジーソリューション事業統括本部 評価システム製品本部 本部長の矢野学氏は「那珂地区との連携や、既存サプライヤーとの協業関係の維持、従業員の住環境維持、物流導線の向上といったことをポイントに立地を選んだ」と語る。
マリンサイトは約12万5000m2の敷地に、設計開発を行う設計棟と生産を行う製造棟の2棟を展開している。両棟は地上6階建てで、延床面積は設計棟が1万8469m2、製造棟が3万422m2となっている。総投資額は約300億円だ。
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