今回の東大は、学生フォーミュラ大会の規格内では厳しいといわれるCVTを搭載した。CVTとは「無段変速機」のことで、ギアによる変速方式ではない。摩擦を利用し、回転数を小刻みに調整しながら走る。ざっくりいってしまえば、「無段」とうたうとおりで、マニュアル車のように「1、2、3」と切り替えない。また、AT(オートマ)車のように自動で切り替わる。
学生フォーミュラの規格では厳しいといわれる理由とは、主に以下の2点だと東京大学のチームリーダー 秋元健太郎さんは考える。
CVTを搭載しているエンジンがあまりなく、あったとしても出力が低い、大きい、重いなどのデメリットがある。CVT搭載のエンジンは直列4気筒600ccのエンジンと比べ、30kgほど重くなってしまう。機械式CVTの場合、自分達の望む変速比を得ることが難しい。制御式CVTの場合には制御ユニットを量産車から流用することは難しい。
東大は電子制御のためのコントローラを自作することで、この壁を乗り越えたという。
「CVTとか変わったことばかりやったりして『本当にこれでいいのか』と迷うこともありましたが、今回は2位に入賞することができました!」(秋元さん)。
昨年の4位からぐっと前進したが、上智大というライバルが、さらにその上に立ちはだかる。
秋元さんは大学1年生のとき、2回大会開催の年(2004年)にチームに入っている。その当時は、チームにとって非常につらい時期だったそうだ。
「2回大会ではオートクロス中にマシンを破損しています。翌年の3回大会でやっとエンデュランスで完走できたのですが、上位校とのマシンの速さの差は歴然としていましたね。あのころの状況から考えると、到底考えられない位置にくることができたと思っています」と過去を振り返り、秋元さんは話した。
ちなみに以下が、過去と今年の成績比較だ。
いまと比べると、以前は出場校数が少なかったので、順位ではあまりピンとこないかもしれない。得点の方で比べてみよう。4年間で総合得点が600点以上伸びている。
秋元さん執筆の東京大学チームのレポートを本シリーズの第3回として公開するのでお楽しみに!
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上智大は、第4回、5回、そしてこの第6回と、合計3度も総合優勝を飾った。上智大学のチームリーダー 小野泰志さんの表彰台での第一声は、「正直いうと、『ほっとした』という気持ちが強いです」。今回の3連覇への期待は相当重かっただろう。
今回からは、リアに大きなウィングが現れた。他校だとまだあまり見られないというエアロダイナミクス(空力)解析の成果である。ウィングにダウンフォースを発生させることで、フレームを沈ませずにタイヤにのみ荷重が乗るようにしたという。またリアには新たにサードダンパが加わった。ブレーキを踏んだときのフレームの沈み込みをこれで抑制する。
パワートレイン面では、エンジンからパネルをなくすことで吸気管の長さを確保してトルクを下げ、よりフラットなトルクを確保したという。また吸気管そのものはカーボン製になり、前年のアルミ製のものより65%も軽くなっている。部品の軽量化は走行スピードやパフォーマンスに大きく響く。
たとえ車両が完璧で、そして速いスピードを出すことができても、それだけではダメなのがこの大会。動的審査の結果には、メンバーの協調性やドライバーの精神状況も大きく影響する。上智大は、エンデュランス時、ドライバーをリラックスさせるために、ある作戦を取った。ほかの大学でもまだ例がないという。その秘密(!?)は、後ほど公開の第4回で明かそう。この回では、上智大学の各リーダーたちによる、車両設計についてのより詳しい説明を掲載予定だ。
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次の第3回は東京大学の秋元健太郎さんによる大会レポートを公開する。(次回に続く)
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