東京大学のフォーミュラチームのリーダー自らが、大会出場の体験記をつづった。ものづくりの成果から起こる感動。
1981年、製造業の衰退に危機感を覚えたアメリカで、大学生への実践的な教育の1つの形として「Formula SAE」(アメリカ自動車技術会 主催)が開催されました。レギュレーションに従い、学生自らの手でレーシングカーの企画、設計、製作を行い、競うというこの大会は、現在約140校が参加するまでになっています。
日本でも、レギュレーションなどをFormula SAEに準拠する形で2003年から「全日本 学生フォーミュラ大会」が開催され、今年で5年目を迎えました。日本大会の参加校は、1回大会では17校でしたが、このたびの5回大会では62校まで増加しました。「学生フォーミュラ」は大学の工学部を中心に、北海道から九州まで、日本全国へ広がりつつあります。
それぞれの大学チームは「アマチュア週末レーサーに販売すること」を仮定して車両を製作します。従って、加速性能、ブレーキ性能、操作性能、耐久性能が優れているだけでなく、美しさ、快適さ、低コスト、メンテナンス性を高めることも要求されます。
また、1日当たり4台の生産計画を基に、その車両の実質コストは2万5000USドル(*300万円前後)以下としています。さらに、車両製作に当たっての車体フレームとエンジンに関する制約を必要最小限にすることにより、独創性や構想力が発揮できるようになっています。
安全にかかわる部分以外は最小限の制約にとどめられています。
静的審査
動的審査
東京大学フォーミュラファクトリー(UTFF)は、2002年6月に工学系研究科産業機械工学専攻の草加浩平教授(当時は助教授)の呼び掛けで発足しました。全日本学生フォーミュラ学生大会(FJSAE)、そしてFormula SAE(米)で優勝することを目標に活動しています。
現在、約40名のメンバーが活動しております。メンバーは工学部機械系3学科、教養学部1、2年生のメンバーが大半ですが、他学部や文系のメンバーもおり、各自の得意分野、興味のある分野に合わせて活動しております。主な活動場所は本郷工学部8号館地下2階、「メカノデザイン工房」で、学生自身が旋盤・フライス盤・NCなどを用いた機械加工や溶接を行っています。
文系メンバーは、UTFFの活動とはまた別に、NPOである「自動車技術を学ぶ会」で、講演会の主催を行ったり、工場見学の開催などの活動を行ったりもしています。
UTFFではこれまで6台のマシンを製作してきました。そのすべてに「SUZUKI SKYWAVE650用エンジン」を搭載し、チームで自作した基板によって自由に制御可能な電子制御CVTにより、2ペダルATレーシングカーを実現しています。このエンジンを搭載するため、ドライバーの横にエンジンを置く「サイドエンジンレイアウト」を採用しています。元々スクーター用である細長いエンジンをドライバーの後に配置すると、ホイールベースが長くなってしまい、道幅の狭いフォーミュラのコースでの走行で不利になってしまうのです。
また、昨年度から搭載しているターボチャージャ(過吸圧1.0kg/cm2、最大トルク9.0kgm、馬力82PS)の開発をさらに進めるとともに、直結デフの採用など新技術を取り入れ、軽量化にも取り組みました。
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