3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるわけではない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第4回は「幾何公差」の話題を取り上げる。
連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もない若手エンジニアの皆さんを対象に、機械設計で知っておくべき基礎知識や考え方などについて解説していきます。
前回は幾何公差の「位置度」について触れました。筆者は、位置度の解釈や位置度を利用するメリットについて、十分に理解されていないと考えています。若手エンジニアだけでなく、設計者の皆さんの中にも、位置度とともに用いられる「最大実体公差」について知らない方がいるかもしれません。今後、主流となっていくであろう「GD&T(Geometric Dimensioning and Tolerancing:幾何公差による設計法)」を理解する上で、これはとても大切な知識です。
概念
図面上で部品の幾何学的な形状、位置、姿勢、振れなどの許容範囲(公差)を明確に定義するための設計の考え方
目的
・設計意図を正確に伝える(一義性を持つ)
・許容範囲の合理的な設定により、品質/コスト/性能のバランスを取る
・設計−製造−検査間の解釈を統一する(一義性を持つ)
そこで今回は、基本となる幾何公差について解説します。
幾何公差は、次のように分類できます。
データム(Datum:基準)を必要とするか/しないかにより分類され、データムを必要としない単独形体として扱うものには「形状公差(Form Tolerances)」があります。一方、データムを必要とする関連形体として扱うものには、「姿勢公差(Attitude Tolerances)」「位置公差(Location Tolerances)」「振れ公差(Runout Tolerances)」があります。
単独形体とは
・定義:他の形体との関係に依存せず、単体で成り立つ形体のこと
・例)1つの穴、1つの軸、1つの平面など
関連形体とは
・定義:他の形体との関係によって定義される相対的な形体のこと
・例)2つの穴の間隔、穴と面の関係、軸の傾きなど
これらをまとめると、図1のように公差の分類ができます。
さらに、幾何公差の詳細を表1に示します。
データムを必要とする幾何公差の中から、筆者が最も使用頻度の高い「姿勢公差」について説明を続けます。
姿勢公差には、以下の5つの幾何公差があります。
このうち、使用頻度の高い「平行度」と「直角度」について詳しく見ていきます。
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