5回大会の優勝校 上智大学チームに突撃取材。一見、イマドキの若者だが、妥協しないものづくりマインドは企業並だ。
第5回 全日本学生フォーミュラ大会で堂々の2連覇を達成した上智大学のSophia Racing。
筆者は、「上智といえば文系」という印象を持っていたのですが……、理工学部もあるのだと、実は、取材を通じて初めて知りました。そんな大学で活動するレーシングチームの勝利の秘密を探ってみました。
――今回のマシン「SR06」ですが、ほかのチームの車両と見比べるとノーズが長いですね。これはどうしてですか?
泉さん:車両をデザインするとき、毎年デザインコンセプトを決めています。今年は、
というものなのですが、学生フォーミュラの規格に沿って設計を進めるときに、空力、シャシー、パワートレインの各パートからそれぞれ要望が出されます。
シャシーから「一昨年のマシンはドライバーのフットスペースが狭かった」という声があり、ドライバーに気持ちよく走ってもらうための結果としてこのような形状(ノーズが長い感じ)になりました。
――エアロダイナミクス(空力)班について
小室さん:特に日本のチーム全体に関していえることなのですが、空力設計を積極的に取り入れているところはまだほとんどない状態です。独立したパートとして取り組んでいるチームは少ないと思います。
シャシー、パワートレインはマシンにとってなくてはならない技術要素ですが、逆に空力は運動性能の向上に必要だけれど、まあ、なくても走れてしまうというか……。
例えば、F1であれば空力の効果はとても大きいのですが、最大制限速度が100km/hくらいの私たちのクルマでは、空力の効果はほとんど出せません。5kgの空力パーツを取り付けたとすると、車両重量が増加してしまい、かえって逆効果になってしまうんです。
なので、私たちはF1やほかのチームをまねするのではなくて、自分たちで独自の空力デザインを切り開いていかなければなりません。
――最高速度が100キロだと、確かに空力パーツは「あってもなくても」という感じかもしれませんね。でも、そこをあえてやる。
小室さん:そうですね、今年からアンダーパネルを取り付けて、ダウンフォースを得るための設計を始めたんですが、最初の段階では、「これで本当に車両性能に貢献できるのか」「実際に取り付けられるのか」どうかも分かりませんでした。そういった意味では、とても難しかったですね。
――1つ1つ、こわごわ……ですか?
小室さん:そうですね。何度も試験走行を重ね、それで結果の良かったパーツしか採用されませんから。
――まるで会社みたいだ!
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