学生が自分たちで製作した自動車の性能を競い合う。未来の日本製造業を元気にしようとガンバル若者たちが活躍!
2007年9月12日から15日の4日間、第5回 全日本学生フォーミュラ大会が行われました。全日本 学生フォーミュラ大会では、学生たちが自分たちで設計・製作したフォーミュラスタイルといわれる小型車両を持ち込んで、設計コンセプト、コスト、走行性能などを含めた「ものづくりの総合力」を競い合います。 米国の「Formula SAE」の日本版として、2003年から自動車技術会によって始められました。
スポンサー企業のリストには、大手の製造メーカーが名前を連ねています。これらの企業の社員たちの中には、本大会の運営スタッフとして積極的に働いている人もいるとのことです。また、大手CADベンダやCAEベンダもスポンサーとなったり、審査に協力したりしています。
上記のような事情からもうかがえるように、今日の日本の製造系企業では、産学連携(さんがくれんけい)による「未来の人材育成」への注目が高まってきているようです。熟練技術を持った「団塊世代」が次々と引退していく時期ということもあり、「これからの自社や日本の製造業を何とか盛り上げていくようにしたい!」と願う企業も多いのでしょう。また、大会公式ページでは、近年の若者の「理系離れ」も指摘しています。
今回は、「第5回 全日本 学生フォーミュラ大会 レポート」として全3回構成でお届けし、未来のモノづくりスペシャリストたちに注目していきたいと思います。
まず、会場に訪れた記者を出迎えたのは、車と人の長い行列。これは「車検」の順番待ちのための列なのです。その列の所々に、傘が開いています。彼らが傘を差す理由に素朴な疑問を感じ、記者がそこにいた学生に尋ねてみたところ、「これは日よけですよ」とのこと。日照によってコクピットに熱がこもるのを防ぐためのようです。この日の天候は、晴れ時々曇り。暑い中、長いこと並び、やがて車検に行き着いてもダメ出しをされ、「振り出しに戻る」というチームもあります。ちなみにこの場合、再度列に並び直しです。辛抱が要りますね。
初日は夕方まで、この行列風景が続きます。車検を通過し、初日からブレーキ試験やチルト(車両を急こう配で傾ける試験)に進めるチームは、以下の写真の状況のように、決して多くはないようです。中には、車検に通ることなく4日間の大会を終え、帰っていくチームもあるといいます。
また、上記の車検と並行して、「コスト・デザイン審査」と「プレゼンテーション」が行われます。
学生フォーミュラ大会では、チームごとのテントが「ピット」と呼ばれます。この日は、どこのチームも車検へ出ずっぱりで、ピットに車がないどころか、人すらいないことも多々な状況。そのような中、大学のピットを回りながら、やっとこさ捕まえたチームリーダーさんたちに話を聞いてみました。 以下では、その一部をご紹介します。
どこの大学も、ハイエンドからミッドレンジクラスの有名な3次元CADを使用して設計し、CAEを使った構造解析、空力解析などを積極的に行っていました。大手製造メーカーさんやCADベンダさんが、大会出場に際してスポンサーになってくださることもあるそう。この大会に 出場するためには、車両に使う部品や材料費用、部品の保管場所の維持費用、会場に来るために掛かるチームメンバー全員の交通費や宿泊費などを含めて、数百万円程度の費用が掛かるそうです。
「設計チームは、「パワートレイン班(エンジンや給排気系の設計)」「シャシー班(車体デザインやフレーム設計)」「エアロダイナミクス班(カウリング設計)」の3つの班に分かれています。それぞれのチームの良いところを 良いバランスで生かして、みんなで協調して設計するようにしました。
(車両後部の)エンジンのサージタンクが箱状になっているのが特徴です。箱の中で圧力波を生み、低速側のトルクを持ち上げるような仕組みにすることで、エンジンの充填(じゅうてん)効率を向上させています。
上智大学のチームは、ほかと比べて、女性メンバーが目立つと思います。女性のチームリーダーもいます(エアロダイナミクス班のリーダーが女性)」(泉 隼太さん)。
「3次元モデルを使って、部品の肉抜きと強度のバランスの解析を行いました」(シャシー班 関塚 紘子さん)。
「アルミフレームにずっとこだわってきました。でも、すべての部品にアルミをというわけではありません。アルミが適したところには、アルミ。鉄が適したところには、鉄。適材適所です。
ドライバーの好みや体格に合わせて調整がしやすくなるようにしました。例えば、吸気管の長さの調整やブレーキの位置調整などができます。それから、パーツを細かく分け、ボルトで固定するようにしました。ドライバーの好みに合わせた部品を自由自在に組み合わせやすくするためです。
中の機能だけではなく、外装のデザインにもこだわっています。実は、この大会では(意匠が)あまり大きく評価されないのです……。それでも、あえて毎年こだわっています!」(堀内 亮さん)。
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