技術変革に加えて、店舗でのユーザー体験(UX)も徐々に変化していった。当初のプリ機は、撮影スペースの中でそのまま背景選択から印刷までを行う形であった。しかし、カラフルなペンやスタンプなどを用いた「ラクガキ」機能の追加に伴い、1つの撮影スペースに対して1つのラクガキスペースを設ける多重接客の構造へと変更。その後、1つの撮影スペースに対して2つのラクガキスペースを配置する形へと進化させたことで、ユーザーはそれぞれの作業時間に余裕を持てるようになった。
その後もフリューは、立体的で自然なパーツバランスを実現する画像加工技術を詰め込んだ「LADY BY TOKYO」(2011年発売)や「BEAUTY ADICT」(2013年発売)、撮影中のライブビューモニターにも加工画像処理を搭載した「KATY」(2015年発売)など、ヒット機を次々と生み出した。近年においても、ユーザー自身がカメラを動かせる「#アオハル」(2019年発売)や、片目ずつ目の大きさを調整できる「ハルイロセカイ」(2022年発売)など、時代のニーズに合わせた体験を提供し続けている。
フリューが時代ごとにマッチした機能や体験を生み出し、ヒットを連発できる背景には、「徹底した市場調査と改善のサイクル」がある。榎本氏は「私たちは根っこがメーカー気質。だからこそ、常にPDCAを回しながら開発を進めている」と語る。フリューは現在でも年間約300回のグループインタビューを実施し、「どんな写りが良いのか」「どんなサービスが欲しいのか」というユーザーのリアルな声を拾い上げ、製品の企画開発に反映し続けている。移り変わりの激しいトレンドへ的確に対応し続けた結果、フリューはプリントシール機市場においてトップシェアを獲得するに至ったのである。
一時は爆発的なカルチャーになったプリだったが、少子化やスマートフォンに搭載されるカメラの高性能化に伴い、業界全体で縮小傾向にある。フリューにおいても、プリントシール機のプレイ数やピクトリンクの会員数の減少は避けられない状況となっている。
フリューはこうした市場環境の変化を見据え、クレーンゲームの景品やホビーグッズなどIP(Intellectual Property、知的財産)を取り扱う「世界観ビジネス」を進めてきた。2025年3月期の売上高約443億円では、世界観ビジネスが57.2%を占め、プリントシール機などを取り扱うガールズトレンドビジネスの33.4%を上回った。
今後のプリントシール機事業における成長戦略として、同社が注力しているのがグローバル展開である。具体的には、各国の文化や言語に合わせてシステムを最適化させた「ローカライズ プリ機」と、アニメやゲームなどのキャラクターの魅力を掛け合わせた「IP プリ機」の海外設置を加速させている。
中国 上海で開催された「Bilibili World 2025」(2025年7月11〜13日、上海国家会展中心)には、初音ミクとコラボレーションした会場限定仕様のプリントシール機「Hyper shot」を出展。現地では連日1時間超の待機列ができるなど、高い注目を集めた。今後は、展開する地域に合わせて検証と調整を進めていく方針だ。
激変するエンターテインメント市場のなかで、榎本氏はプリントシール機事業の今後について次のように展望を述べた。
「現在、アニメやキャラクターなどを応援する“推し活”の文化は、グローバル規模で見ても非常に盛んだ。この推し活にプリントシール機という体験を掛け合わせることで、熱量の高いユーザーが幾度も足を運び、市場そのものを押し広げてくれると考えている。今後はIP領域も絡めた上で、プリントシール事業を強固なものにしていきたい」(榎本氏)
若者のコミュニケーションツールとして誕生し、画像処理技術の進化とともに独自の文化を構築してきたプリントシール機。誕生から30年、時代に合わせてビジネスモデルを転換し続けるフリューの挑戦は、新たなフェーズへと向かっていく。
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