三角線図の読み方が分かったところで、抽出設計を行うための作図方法を解説します。基本操作として、抽質を希釈剤に溶かした抽料と抽剤を混合することになります。次の手順で作図を行います。
単抽出で目的成分を十分に回収できない場合は、抽残液に新しい抽剤を加えて多回抽出を行います。一般に、同じ総量の抽剤を使う場合でも、1回で全量を加えるより、複数回に分けて抽出した方が回収率は高くなる傾向にあります。三角線図で作図する場合も、原料組成の点が抽残液の点に変化するのみで手順は変わりません。これを目的とする組成になるまで繰り返します。
図4 多回抽出における作図のイメージ。※図4に設けたM'およびM''は図作成の都合上、事前に作成したタイライン上に都合よくプロットされています。実際には原料(もしくは抽残液)と抽剤との量の比によりM'およびM''の位置が決まり、そのうえでタイラインとの交点が決まります[クリックで拡大]工業的には、抽出効率の高い連続向流多段抽出が広く使われます。これは、抽料と抽剤を逆方向に流しながら何段にもわたって接触させる方法です。ミキサーセトラーを直列に並べたり、抽出塔内で液同士を向流接触させたりして実現します。比重の大きな液は上から入れて下から取り出し、比重の小さな液は下から入れて上から取り出します。
このとき、必要な抽出回数(理論段数)は三角線図上の作図から求められます。これは蒸留におけるマッケーブ・シール法(第15回の蒸留塔の理論段数と還流比の計算で解説)に対応するものとして理解できます。
ただし計算された理論段数は、液と液が完全に混ざり合い、平衡に達する理想的な状態を前提としています。実際の装置では完全に平衡には達しないため、総括段効率を考慮して実際の段数を設定します。「化学工学便覧 第6版」によると、ミキサーセトラーでは混合と分離が独立しているため一般に高い段効率(90%以上)が得られます。対して抽出塔の場合は1回の接触時間が短く相分離も十分に行われない影響もあり、段効率は低め(30〜80%程度)になります。
撹拌(かくはん)槽で十分混ぜて抽出/分離するミキサーセトラー型の方が効率は良いですが、スペースやコストの面から抽出塔が選ばれる場合もあります。
今回は、三角線図を用いた抽出操作の基本的な作図法と、装置設計の考え方について解説しました。実際の原料は多成分になる場面が非常に多いものの、三角線図を活用した設計は、系内を非常に単純化した基礎的な作図法です。この考え方を理解することで最適な分離プロセスの選択がイメージできるようになります。
抽出の基本原理
蒸留塔の理論段数と還流比の計算
撹拌動力計算とスケールアップ指標
反応装置の種類と反応特性
さまざまな反応器における設計方程式
不均一系触媒反応の機構と反応器
不均一系触媒反応装置の性能計算Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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