蒸留塔の理論段数と還流比の計算はじめての化学工学(15)(1/2 ページ)

前回の蒸留に関する基本を踏まえて、単純なモデルを用いた蒸留計算に進みます。この計算が、必要な蒸留塔の性能や運転条件を求めるためのベースとなります。

» 2026年02月04日 07時00分 公開
[かねまるMONOist]

理論段数

 蒸留塔の重要な設計指標が理論段数です。“段数”とあるように、「段(トレイ)」で区切られた棚段塔を基準に考えます。蒸留塔内部では、気体と液体が接触することで物質移動が行われます。1段が蒸留1回分に相当します。

 理想は、各段で十分に混合/接触され、気相/液相ともに気液平衡に達した組成で次の段に出ていくことです。この理想的な状態において、目的の成分比率へ蒸留分離するために必要な塔の段数を理論段数と呼びます

 しかし、実際の蒸留塔では、各段で気液が接触しても完全な平衡状態までには到達しません。そのため、まずは理論段数を求めた後、後述する段効率という係数で補正して実段数を決定します。

2成分系の計算:マッケーブ・シール法

 混合物が2つの成分(例えばベンゼンとトルエン)から成る場合、マッケーブ・シール法(McCabe-Thiele Method)という図解法を用います。視覚的に理論段数を求められることが特徴です。

 作図に必要なのが気液平衡曲線です。低沸点成分の方が蒸発しやすいため、液相/気相で成分比率が異なります。圧力一定下での液相/気相における成分比を描いた曲線が気液平衡曲線です。この曲線は相対揮発度(比揮発度)αから計算されます。αは2つの成分が蒸留によってどれだけ分離しやすいかを示す指標です。xを液相中の低沸点成分のモル分率、yを液相中の低沸点成分のモル分率とすると、y=αx/{1+(αー1)x}で表されます。

 気液平衡曲線と対角線(y=x)との間で階段状に作図を行うことで、必要な理論段数を数えることができます。曲線が対角線から離れているほど、分離が容易であることを意味します。

 気液平衡曲線が描けたら、まずは留出液組成(塔頂の目標純度)、原料液組成(フィードの組成)、缶出液組成(塔底の目標純度)をプロットします。これらの点は操作線の端点となり、作図の基準点となります。

図1 気液平衡曲線および各種組成のプロットイメージ 図1 気液平衡曲線および各種組成のプロットイメージ[クリックで拡大]

 次にq線を描きます。q線は原料の熱的状態を表す線です。フィード組成の点を通り、傾きがq/(qー1)の線です。qの値によって傾きが変わります。

  • q=1(飽和液体):垂直線
  • q=0(飽和蒸気):水平線
  • 0<q<1(気液混合):負の傾き

 その後、濃縮部操作線および回収部操作線を描きます。濃縮部操作線は、塔頂の目標純度の点を通り、傾きがR/(R+1)の線です。Rは還流比で、塔頂から得られた液をどの程度塔内に戻すかを表します。塔に戻す液流量Lと系外に取り出す液流量Dの比L/DがRです。q線と濃縮部操作線との交点から塔底の目標純度の点にまで伸ばした線が回収部操作線です。

図2 q=1におけるq線、濃縮部操作線および回収部操作線の描画イメージ 図2 q=1におけるq線、濃縮部操作線および回収部操作線の描画イメージ[クリックで拡大]

 最後に、階段作図を行います。右上の塔頂組成からスタートし、各操作線と気液平衡曲線の間を交互に水平線/垂直線で結び、階段状に線を引いていきます。線は塔底の目標純度の点を超えるまで弾きます。その時に描画した階段の角(平衡曲線に接する点)の数が、理論段数です。ただし、塔底にあるリボイラー(再沸器)は1段分としてカウントされます。塔内に設置する実際の棚段数は「総ステップ数ー1」となります。今回の例の場合、総ステップ数が9.74段、リボイラーを除いて8.74段です。また、原料供給段(フィード段)の位置は5段目となります。

図3 階段作図の完成イメージ 図3 階段作図の完成イメージ[クリックで拡大]
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