次世代電池として期待される「ペロブスカイト太陽電池」。その量産化を後押しする新技術が発表された。三菱マテリアルは、高い発電効率を実現する電子輸送層向けインクのサンプル提供を開始した。
三菱マテリアルは2026年7月27日、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、電子輸送層を形成するためのインクのサンプル供試を開始したと発表した。同インクは、低コスト材料を用いながら高い発電効率を実現するとともに、塗布による成膜プロセスに適した材料設計により、量産化に向けた安定した製造に貢献するとしている。
近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、軽量/柔軟で設置場所の自由度が高いペロブスカイト太陽電池の開発が加速している。同電池は複数の機能層から構成されており、その性能は各層の材料特性に依存する。中でも、ペロブスカイト発電層で生成した正孔と電子のうち、電子のみを集電板に運搬する「電子輸送層」は、発電した電気を効率よく取り出す役割を担う重要な層だ。
しかし、電子輸送層には、発電効率の向上と安定した製造の両立という観点でいくつかの課題がある。具体的には、ペロブスカイト層との界面で生じる電気的損失の抑制や、デバイス性能のばらつきを低減する均一な膜形成が求められる。また、フィルム基板やペロブスカイト層は熱やプロセス条件の影響を受けやすいため、ダメージを与えない低温プロセスへの対応も重要な課題となる。
同社のイノベーションセンター(茨城県那珂市)では、これらの課題を解決するため、酸化スズ(SnO2)ナノ粒子を用いたインクの開発に取り組んできた。ペロブスカイト太陽電池には、「順型構造」と「逆型構造」と呼ばれる2つの構造があり、それぞれで電子輸送層に求められる材料や形成方法が異なる。2022〜2025年度にかけて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の下、エネコートテクノロジーズとの共同開発を通じて、順型構造向けおよび逆型構造向けの電子輸送層インクの開発を並行して進めてきた。
今回、これまでの技術開発の成果を受け、実用化に向けた取り組みの一環として、対外向けのサンプル供試を開始する。同インクは、順型構造向けと逆型構造向けに最適化した2種類をラインアップしている。塗布による成膜が可能であることから、大面積化および製造コスト低減に適している他、ナノ粒子分散制御により均一で安定した膜形成が可能で、再現性の高い製造プロセスへの展開が期待される。
さらに、同社は順型/逆型双方のデバイス構造に関する開発を進めており、それぞれの特性に応じた材料設計が可能であることも強みの1つだ。特に逆型構造においては、一般的に用いられている高価なフラーレン(C60)を使用しないデバイス構造で、既に16.0%の発電効率を達成しており、従来の市販品インクと比較して約1.5倍の性能向上を確認している。
今後は、サンプル供試を通じて顧客からのフィードバックを得ながら用途や仕様の最適化を進めるとともに、さらなるデバイス性能の向上および量産プロセスの確立に取り組んでいく考えだ。
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