遷移金属を含む窒化アルミ系半導体を作製、界面電子密度が3倍超に増加:研究開発の最前線

東京理科大学は、遷移金属のニオブ(Nb)を含む窒化アルミニウム(AlN)系半導体「窒化アルミニウムニオブ(NbAlN)」を、窒化ガリウム(GaN)上に単結晶の極性ウルツ鉱型薄膜として作製することに成功した。

» 2026年09月25日 11時00分 公開
[MONOist]

 東京理科大学は2026年9月3日、遷移金属のニオブ(Nb)を含む窒化アルミニウム(AlN)系半導体「窒化アルミニウムニオブ(NbAlN)」を、窒化ガリウム(GaN)上に単結晶の極性ウルツ鉱型薄膜として作製することに成功したと発表した。東京大学、三重大学との共同研究による成果で、遷移金属を含む極性窒化物へ材料選択の範囲を広げ、GaN電子デバイスのキャリア密度制御に新たな選択肢を示した。

研究の概要 研究の概要 出所:東京理科大学

 AlNやGaNなどの極性ウルツ鉱型窒化物半導体は、原子の並び方に由来する自発分極と、ひずみ由来の圧電分極を持つ。異なる窒化物を重ねた界面では、この分極の差で高密度かつ高移動度の二次元電子ガス(2DEG)を形成する。この性質は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)をはじめとするGaNパワー/高周波デバイスの動作基盤となっている。

 例えば、窒化アルミニウムスカンジウム(ScAIN)では、AlNにスカンジウム(Sc)などを加えると、一定の組成範囲でウルツ鉱型構造が保たれ、格子定数や圧電性、強誘電性などの機能が変化する。この発見を計器に、AINにさまざまな元素を加え、新しい極性窒化物を開拓する研究が進んでいる。

 しかし、Nbは部分的に電子が入ったd軌道を持つ遷移金属で、通常は金属的な岩塩型NbNを形成しやすい元素だ。そのため、NbをAlNに取り込み、四面体配位からなるウルツ鉱型構造と長距離の極性秩序を維持できるかは、窒化物材料科学における重要な未解決課題だった。

 そこで今回の研究では、添加元素による電荷補償を用いない三元系NbAlNに着目。まず、反応性スパッタエピタキシー技術を用いて、GaN基板上にNb含有量11〜37%のNbAlN薄膜を作製した。その結果、Nb含有量25%までは、滑らかな表面とGaNに整合したウルツ鉱型結晶構造を維持し、高品質なエピタキシャル成長を確認できた。一方、Nb含有量37%では表面が粗くなり、結晶品質も大きく低下した。この結果から、今回の成長条件では少なくともNb含有量25%までは高品質な成長が可能で、37%ではその維持が難しいことが分かった。

極性ウルツ鉱型NbAlNの結晶構造を表現したイメージ図 極性ウルツ鉱型NbAlNの結晶構造を表現したイメージ図[クリックで拡大] 出所:東京理科大学

 また、高角度環状明視野走査透過電子顕微鏡(ABF-STEM)と走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型 X 線分光法(STEM-EDS)を用いて、Nbを23%含むNbAlN薄膜を観察し、分析した。その結果、NbAIN/GaN界面付近と膜上部の観察領域で、GaNと同じ金属極性の積層が確認された。さらに、NbAIN層内にはNbに富むナノ領域が見られたが、粒界や独立した結晶相を形成せず、周囲と連続したウルツ鉱型格子の中に取り込まれていた。

 NbAlN/AlGaN/AlN/GaNヘテロ構造のホール効果測定では、NbAlNを用いない参照構造のシート電子密度が約5.1×1012cm−2だったが、775℃で成長したNbを10%含むNbAINバリア層(厚さ13nm)を導入すると、シート電子密度が1.7×1013cm−2となった。これは参照構造の3倍を超える値だ。675℃で成長した試料でもシート電子密度が約9×1012cm−2まで増加し、効果の大きさが成長温度に依存することが判明した。

 室温の電子移動度は、参照構造の1690cm2 V-1 S-1に対し、675℃の成長では644cm2 V-1 s-1、775℃の成長では1485cm2V-1s−1だった。775℃成長試料では、高い電子密度と比較的高い移動度が両立している。冷却してもシート電子密度がほぼ一定で、移動度は80Kで6800cm2V−1s−1に達した。

 今後は、分極定数やバンドアライメントの測定、界面/不純物の詳細解析、トランジスタ作製を進めることで、NbAlNバリアの動作機構とデバイス性能を明らかにする必要があるという。

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