化石燃料依存と将来の電力不足を「フュージョンエネルギー」で解決する。そんなビジョンを掲げる日本のスタートアップが、核融合発電の実証炉建設へ向けた大きな一歩を踏み出した。
核融合発電(フュージョンエネルギー)の商用化を目指すスタートアップのStarlight Engineは2026年7月15日、東京都内で記者発表会を開催し、開発を予定しているトカマク型核融合炉の実証装置が工学設計フェーズに入ったことや、第三者割当増資により総額60億円超の外部資金を初めて調達したことを紹介した。
現在、国内の一次エネルギー供給の約8割が化石燃料で、主要化石燃料は約99%を輸入に依存している。結果として、エネルギー自給率は15.3%と低く、化石燃料輸入額は27兆円に及ぶ。一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)/GX(グリーントランスフォーメーション)に伴う需要増と設備更新で、2050年には最大89GWのエネルギー供給力不足が見込まれている。
Starlight Engine 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の菊地清貴氏は「当社はビジョンとして『POWERING the FUTURE』を、ミッションとして『私たちが、フュージョンエネルギーを実現する。』を掲げている。国内には(核融合発電設備に関する材料などを供給する)サプライヤーや電力の需要家が多く存在する。これらの企業や大学、研究所などと、産学官の連携体制を構築し、2030年代に世界に先駆けて、フュージョンエネルギーの発電実証を行うことを目指している。AI(人工知能)の普及による電力需要の増大やカーボンニュートラル社会の実現、これらは人類の挑戦だが、われわれはフュージョンエネルギーで答えを出す」とあいさつした。
同社は現在、2040年代に核融合発電炉の商用化を見据え、「トカマク型統合発電実証(FAST:Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)プロジェクト」を推進している。核融合発電に必要な要素技術を結集し、1つのフュージョンプラントとして統合する他、個別技術の性能とプラント全体の稼働性を重視する考えだ。産学官の連携を通じてプラントを建設し、産業としてのサプライチェーンも構築する。将来は、商用プラントの世界展開を通じて核融合発電を日本の成長産業にする方針を掲げている。
一方、Starlight Engine 副社長 執行役員 最高戦略責任者(CSO)の東修平氏は、国内外における核融合発電設備の開発状況について触れた。
東氏は「現在、国内だけでなく、米国や中国も含めて、核融合発電設備の開発や発電実証、商用プラントの実現に向けた競争が本格化している。核融合発電設備で使用されるマグネットは、高温超電導(HTS)タイプと低温超電導(LTS)タイプが存在する。LTSタイプより高い磁場を生じ、プラントを小型化できるHTSタイプのマグネットは、核融合発電業界の中で大きなイノベーションの1つとなっている。特に米国を中心に開発が進んでいる」と前置きした。
その上で、「日本では国内最大のトカマク型超電導プラズマ実験装置として『JT-60SA』が存在する。これにより、プラズマ制御の研究などで、世界をリードしている。そうした中で、米国では民間企業のCommonwealth Fusion Systems(CFS)は、商業利用可能なトカマク型核融合炉のデモ機『SPARC』や商用発電所モデルのトカマク型核融合炉『ARC』の建設計画を発表し、建設を進めている。中国では、燃焼プラズマ実験超電導トカマク型核融合炉『BEST』や中国核融合工学実験炉『CFETR』の開発を推進している」と述べた。
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