60億円を調達、核融合スタートアップが実証炉の工学設計に前進材料技術(2/3 ページ)

» 2026年07月21日 07時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

新たに合計17の投資家

 同社は、第三者割当増資により、総額60億6000万円の外部資金の調達を初めて実施した。グローバル・ブレインをリード投資家に、電力、建設、不動産、通信、金融、素材メーカー、大学系ベンチャーキャピタル、海外ベンチャーキャピタルと、幅広い業界を代表する合計17の投資家を迎えた。

幅広い業界を代表する17の投資家が参画 幅広い業界を代表する17の投資家が参画[クリックで拡大] 出所:Starlight Engine

 具体的には、グローバル・ブレイン、三井不動産、KDDI新規事業育成5号投資事業有限責任組合、東急建設、富国生命保険、ソニーフィナンシャルベンチャーズ&グローバル・ブレインフロンティア、AV(旧Airbus Ventures)、京都大学イノベーションキャピタル、慶應イノベーション・イニシアティブ、K4V Vital Platform Fund 1号 投資事業有限責任組合(関西電力グループ)、大和企業投資、フジクラ、古河電気工業、みずほ銀行、BRICKS FUND TOKYO(三菱地所のCVC)、三菱UFJ銀行となる。なお、17社目は非公表としている。

 菊地氏は「足元の状況だが、2030年代の発電実証とその後の商用化を目標に、スタートアップに対して向こう3年間で最大600億円の補助金を支援する経済産業省のプログラムが走っている。先日応募してプレゼンを行った。結果は、8月末に判明すると聞いている」と語った。

統合システム検証のコンセプトはQ≒2

 今回の調達を踏まえて、FASTプロジェクトでは、実機建設を見据えた工学設計、研究開発、サイト/規制対応、サプライチェーン構築を加速するとともに、プロジェクト推進に必要な人材や組織体制の強化を図る。商用プラントの実現と社会実装を見据え、フュージョンエネルギー産業の創出にも取り組む。

FASTプロジェクトを、次なるフェーズへ FASTプロジェクトを、次なるフェーズへ[クリックで拡大] 出所:Starlight Engine

 「FASTプロジェクトは、民間主導の核融合発電設備の発電実証および統合プラントの開発計画だ。最も多くの実績があるトカマク型を採用している。2035年に運転を開始し、2038年に発電実証を実施する予定だ。得られた技術や規制、建設、運転の知見を、2040年代以降の商用化/世界展開につなげる」と東氏は改めて説明した。

 核融合発電設備の商用化に必要な機能は、「プラズマ」と「炉工学」のカテゴリーに大別できる。プラズマでは、「高性能プラズマ運転」「重水素-トリチウム燃焼」「自己加熱(α加熱)」が必要な機能だ。炉工学では、「超電導マグネット」「ダイバータ」「燃料サイクル」「遠隔保守」「ブランケット」「統合プラント運転」の機能が求められる。

 FASTプロジェクトでは、「高性能プラズマ運転」「自己加熱(α加熱)」「ブランケット」の関連技術の他、それ以外の項目も主要な技術の研究開発を行っている。

FASTプロジェクトは、ITERから商用化への技術ギャップを埋める。ITERとは核融合発電の実現を目指すプロジェクトで、日本、EU、米国、ロシア、韓国、中国、インドが参加している FASTプロジェクトは、ITERから商用化への技術ギャップを埋める。ITERとは核融合発電の実現を目指すプロジェクトで、日本、EU、米国、ロシア、韓国、中国、インドが参加している[クリックで拡大] 出所:Starlight Engine

 同プロジェクトは、2025年に発表した概念設計の方向性を考慮して、発電実証に向けて工学設計のフェーズに移行する。概念設計では、基本運転のコンセプトは、エネルギー増倍率(Q)≒1で、サイズは主半径が3m、核融合出力は最大50MWth、発電出力は最大10MWeとしていた。

 工学設計では、基本運転(統合システム検証)のコンセプトはQ≒2で、発電実証運転(商用プラントに近い炉心の検証)の基本コンセプトはQ≒10としている。サイズは主半径が4mで、核融合出力は最大200MWth、発電出力は最大76MWeとした。

概念設計から、工学設計フェーズへ移行 概念設計から、工学設計フェーズへ移行[クリックで拡大] 出所:Starlight Engine

 東氏は「核融合発電の商用化を実現するためには、日本中の産業技術を結集させる必要がある。『炉統合システム』『超電導コイル』『ダイバータ』『燃料システム』『ブランケット』など、さまざまな技術が必要だ。プラントメーカー、エンジニアリング会社、重電メーカーなど、さまざま企業と協力する」と語った。

日本の産業技術を結集し、フュージョンサプライチェーンを形成 日本の産業技術を結集し、フュージョンサプライチェーンを形成[クリックで拡大] 出所:Starlight Engine

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