不均一系触媒反応装置の性能計算はじめての化学工学(13)(1/2 ページ)

前回取り上げた固体触媒を用いた不均一系触媒反応に対して、今回は設計指標として活用できる内容を解説します。この指標は触媒の性能や装置サイズに影響します。

» 2025年12月10日 07時00分 公開
[かねまるMONOist]

空間時間

 空間時間(T)は(触媒層の体積)/(原料のフィード量)=V/v0です。Tの値が小さい方が反応器のサイズを小さくできます。この空間時間は、原料が反応器内にとどまる時間であり、触媒と接触している時間でもあります。数値が大きいほど反応物と触媒の接触時間が長くなり、生成物への高い転化が期待できます。ただし目的の反応以外に副反応も進みやすくなり、選択率が低下する可能性があります。そして必要な触媒量が増えるため、反応器が大型化し、設備コストが増加します。

 原料が気体の場合、その体積は温度や圧力によって大きく変わります。そのため、v0は「標準状態(0℃、1atm)換算」なのか、「反応器の入口条件(例:400℃、3MPa)」なのかを明確に区別して計算する必要があります。

 論文などではTではなく、逆数である空間速度が用いられる場合もあります。こちらは「単位時間当たりに、触媒体積の何倍の量の原料を処理しているか」を示す指標です。

触媒層の圧力損失

 固定床反応器では、流体が充填(じゅうてん)層を通過する際に圧力損失が生じます。この式からポンプ動力や流量、充填層長さの判断を行います。代表的な計算方法としてエルガンの式があります。エルガンの式は、充填層空隙率εの関数です。そのため触媒の劣化に伴い触媒の粒が粉化すると、微粉が空隙を埋めてεが減少するため、圧力損失増加につながってしまいます。

図1 エルガンの式による圧力損失計算 図1 エルガンの式による圧力損失計算、Δp:圧力損失[Pa]、L:触媒層の長さ[m]、dp:充填粒子の代表径[m]、u0:空塔速度(断面積で平均化した見掛け流速)[m/s]、ρ:密度[kg/m3]、μ:粘度[Pa・s]、ε:充填層空隙率[-][クリックで拡大]

 加えて、流速が小さい場合、粘性支配(層流的)となり、第1項(∝u0)が支配的になります。一方、流速が大きい場合、慣性支配(乱流的)となり、第2項(∝u02)が支配的になります。

 流動床反応器において流体速度を上げていくと、ある点で充填粒子が流体中に浮遊し始め、最小流動化速度に達します。最小流動化速度では、圧力損失が粒子層重量と釣り合います。それ以上の流速では粒子が完全に流動化して圧力損失がほぼ一定となるのが特徴です。圧力損失はエルガンの式から導きます。

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