筆者の経験したODMに関するエピソード【前編】 〜部品表の重要性〜ODMを活用した製品化で失敗しないためには(17)(2/2 ページ)

» 2025年12月08日 08時00分 公開
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反省点

 多くのODMメーカーは、部品表や部品コストを提示したがらない傾向があるが、発注側として必ず提示を求めるべきである。もし、どうしても提示しないというのであれば、当初の見積もり時に合意した製品の引き渡し価格や金型費は絶対に変更すべきではない。今回のように、部品表を出さずに追加コストのみを請求するような対応は、決して許容されるべきではない。

 製品は数年間にわたり生産が続くものであり、その期間中には、エネルギー価格の高騰などにより部品コストが想定外に上昇することも十分にあり得る。そのため、状況によっては引き渡し価格の引き上げがやむを得ないケースもある。

 しかし、その際には部品表とともに部品コストを提示し、どの部品がいくら値上がりしたのか分かるようにしなければ、その要求は認められない。これはODMメーカーにとっても不都合となる。

 もし、製品内部の部品配置/構造を想定して見積もりが行われ、それに併せて部品表が提出されていれば、部品の不足もこちらで事前に把握できたかもしれない。また、価格の引き上げや金型費の追加も、双方の正しい理解と合意に基づいて進めることができたはずである。

 ただし、以下のようなケースでは追加コストが発生するため、スタートアップはあらかじめ理解しておく必要がある。

(1)仕様の変更/追加

 設計段階で、「意匠に影響する金属部品を黒メッキにしてほしい」とODMメーカーに要望した。無色メッキと比べると、黒メッキの方が部品コストは高くなる。もともと仕様書には色に関する記載がなかったため、ODMメーカー側ではコストの安い無色メッキで設計を進めていた。この場合、黒メッキへの変更に伴う価格アップはやむを得ない。

(2)開発を委託

 製品に内蔵する小型カメラモジュールについて、品質上の理由から当初想定していた部品を別のものに変更するようODMメーカーに依頼した。これにより、新しいカメラモジュールがこの製品に適しているかの検証に加え、フォーカス距離の変更に伴って製品の最大寸法が変わることから、製品として成立するかを検討する開発業務が必要となった。このようなケースでは、追加の設計コストが請求されても仕方がない。

 なお、“開発”の意味については、連載第11回を参照してほしい。 (次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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