本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第1回は、同じ図面で製作した複数台の直動パーツフィーダーにおいて、ボルトが1週間で折れたり折れなかったりするという、再現性のない厄介な事例を紹介する。
今回から新シリーズを始めます。メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく連載となります。筆者が関わった企業の事例については、元が分からないように機械の形状や数値データを全て作り直していますが、筆者自身の事例は正直に書こうと思います。
本企画の趣旨から連載名を「冴えない機械の救いかた」と名付けました。少し気に入っています。検索してみてください。最初に紹介する機械は、時の首相の発言に対して責任を全うしていたので、「100%冴えていた機械」の事例になります。この事例は、筆者が問題を解決したわけではなく、対策後の機械が本当に大丈夫かを調べた仕事でした。
全く同じ図面で、同じ時期に複数台の機械を作ることはよくあります。全ての機械に不具合があれば、案外簡単に解決できることもありますが、1号機はうまくいっているのに2号機は性能が出ない、そして3号機ではボルトが疲労破断する。3号機のボルトを交換したら、なぜか快調に動くようになったが、ある期間が過ぎた後に、今度は調子の良かった1号機が悪くなる――といったことが、たまにあります。現象が再現できないため、なかなか原因がつかめないのが難点です。まずはこのような事例を紹介しましょう。
この記事の最後に、本シリーズで紹介する事例をリストアップしていますが、現象が再現できない事例については、あと1件紹介するつもりです。
ネット空間には内容の密度が薄く、たくさんの広告が本文中に挿入されていて、本当に知りたいことが結局ズバリ書かれていないページが数多く存在します。筆者はなるべくこの逆になるように原稿を書いてきたつもりですが、これまでのシリーズはベテランの方から「分かりやすい」とのお言葉をいただいてきた一方で、初心者には不親切だったと思っています。
今回のシリーズは、初心者の皆さんもターゲットにしているため、ベテランの方は内容の密度がやや薄く感じるかもしれませんが、その点はご容赦ください。また、途中で過去の記事を再掲する場面もありますが、全て初心者向けに書き直す予定です。決して「尺を稼いでいる」わけではありません。では、始めましょう!
ある日、筆者の事務所に電話がかかってきました。
【電話の相手】Webサイトを見たのですが、高橋さんは、病院にあるMRI装置の騒音低減の仕事をされていましたよね。メカ振動で相談したい案件があるのです。MRI装置の騒音については、当社が超電導マグネットに使う液体ヘリウムも供給している関係で、うかがっております。
【筆者】はい、お役に立てるかもしれません。一度、装置を見たいと思います。どこにお伺いすればよろしいでしょうか?
【電話の相手】テロ対策がありますので、場所はお伝えできません。成田空港のタクシー乗り場に来てください。迎えに行きます。
このやりとりの後、筆者は成田空港に向かいました。
今回の仕事は、成田空港近くのある作業所で行われました。詳しくは書けませんが、「ある物質」を前述したように一定量供給する「直動パーツフィーダー」が複数台あり、ボルトが1週間で折れたり、折れなかったりするというお話でした。
「パーツフィーダー」で検索すると、小ねじやボルトを1本ずつ整列させて供給する装置がたくさん出てきますね。巻貝の殻を半分に割ったようなお皿の中にねじがあり、ねじが渦巻き状の坂道を登っていって、1本ずつ出ていきます。ここで紹介するのは、直動パーツフィーダーです。部品が載るお皿は貝殻状ではなく、四角い箱です。
例えば、角砂糖を1秒間に10個ずつ供給したいとしましょう。図1のように、お皿に盛った角砂糖があるとします。お皿を少し傾けても角砂糖はその状態を保ちますが、さらに傾けると角砂糖は「バサーッ」と一気に雪崩れ落ちますね。これでは、所望の「1秒間に10個ずつの供給」ができません。
では、図2に示すようにお皿を振動させてみましょう。おそらく角砂糖は1つずつ落ちていき、振幅や振動の周期を調整することで、目的である「1秒間に10個ずつの供給」が実現できそうです。このような装置が直動パーツフィーダーです。
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