NVIDIAとダッソーがCEO対談 産業AI基盤構築で戦略的パートナーシップ締結3DEXPERIENCE World 2026

ダッソー・システムズは年次イベント「3DEXPERIENCE World 2026」において、NVIDIAとの戦略的パートナーシップを締結したことを発表。同イベントの中で、ダッソー・システムズ CEOのパスカル・ダロズ氏と、NVIDIA 創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏が対談形式で協業の背景や狙いについて語った。

» 2026年02月05日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 ダッソー・システムズは2026年2月3日(現地時間)、米国テキサス州ヒューストンで開催中の年次イベント「3DEXPERIENCE World 2026」(会期:同年2月1〜4日[現地時間]/会場:ジョージ R.ブラウン コンベンションセンター)において、NVIDIAと長期的かつ戦略的なパートナーシップを締結したと発表した。

 本稿では、同イベントにおける対談およびプレス向け説明会の内容を基に、両社の取り組みについて紹介する。

「3DEXPERIENCE World 2026」のステージ上で対談したNVIDIA 創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏(左)とダッソー・システムズ CEOのパスカル・ダロズ氏(右) 「3DEXPERIENCE World 2026」のステージ上で対談したNVIDIA 創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏(左)とダッソー・システムズ CEOのパスカル・ダロズ氏(右)

インダストリアルAIプラットフォームの構築を目指す

 両社は、ダッソー・システムズのVirtual Twin(バーチャルツイン)技術と、NVIDIAのAI(人工知能)インフラやオープンモデル、アクセラレーテッドソフトウェアライブラリ群を組み合わせ、産業向けAIの共通アーキテクチャ(インダストリアルAIプラットフォーム)の構築に取り組む。

 協業の中核に据えるのは、科学的に検証された産業向けAIモデル「INDUSTRY WORLD MODELS」と、エンジニアの新しい働き方をもたらす「Virtual Companions(仮想空間のアシスタント機能/バーチャルコンパニオン)」である。

 INDUSTRY WORLD MODELSは、現実世界の法則や因果に根差したモデルに、産業固有の知識やノウハウを重ねたものとして位置付けられる。両社はこれをダッソー・システムズの「3DEXPERIENCEプラットフォーム」上で展開し、設計/解析/製造の意思決定を支える基盤として整備していく方針だ。

現実世界の法則や因果に根差したモデルに、産業固有の知識やノウハウを重ねた「INDUSTRY WORLD MODELS」 現実世界の法則や因果に根差したモデルに、産業固有の知識やノウハウを重ねた「INDUSTRY WORLD MODELS」[クリックで拡大]

 協業の狙いについて、ダッソー・システムズ CEO(最高経営責任者)のパスカル・ダロズ氏は「AIが科学や物理、検証された産業知識に根差すと、人間の創意工夫を増幅する力の増幅器になる」と述べる。生成AIのような表層的なAIにとどまらず、産業/工学/科学に根差したAIによって、複雑なシステムを確信を持って設計、シミュレーションし、運用できるようにするという。

 また、ダロズ氏は産業の価値の源泉が変化しているとの認識を示し、「20世紀は産業がモノを使い、モノを生産する時代だった。この新しい世紀では、産業は知識とノウハウを生産し、その知識とノウハウがモノを生み出す」と強調した。バーチャルツインと「3D UNIV+RSES」を結び付け、知識が蓄積/拡張され、結果が信頼できるものになる「Knowledge Factories(ナレッジファクトリー)」として構築する構想も語っている。

 一方、NVIDIA 創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏は、AIを社会インフラとして位置付ける時代に入ったとの見方を示し、「AIはあらゆる産業にとって基盤となり、やがて水や電気、インターネットと同様のインフラになる」と述べた。設計や製造についても、将来は設計からシミュレーション、検証までをデジタルで完結させる比重が高まるとし、産業向けのバーチャルツインが果たす役割はさらに大きくなるとの認識を示した。

 両社は協業に向けて、「NVIDIA CUDA-X」のアクセラレーションライブラリ、「NVIDIA RTX」「NVIDIA AI」「NVIDIA Omniverse」を活用する方針だ。これらをダッソー・システムズの製品群と組み合わせることで、設計/解析/検証/運用/認証にわたるデジタルエンジニアリングを、より大規模かつ高速に扱えるようにする。

協業に向けた取り組みイメージ 協業に向けた取り組みイメージ[クリックで拡大]

 適用範囲は製造業にとどまらず、ライフサイエンス領域にも広がる。「NVIDIA BioNeMo」プラットフォームと、ダッソー・システムズの「BIOVIA」の科学的検証に基づくINDUSTRY WORLD MODELSを組み合わせることで、新しい分子や次世代材料の発見を加速するとしている。

 ダッソー・システムズの「SIMULIA」では、NVIDIA CUDA-XやAI Physicsライブラリを活用したAIベースの物理挙動予測によって、設計者/エンジニアが結果を正確かつ即時に予測できるよう支援する。

 製造領域では、NVIDIA OmniverseのAI Physicsライブラリを、ダッソー・システムズの「DELMIA」のバーチャルツインに統合し、自律的でソフトウェアデファインドな生産システムを実現するとしている。

 バーチャルコンパニオンについても、両社は設計者の仕事の在り方を変える要素と位置付ける。フアン氏は「設計者はコンパニオンに置き換えられるのではなく、コンパニオンを率いる存在になる」と述べ、設計者が複数のバーチャルコンパニオンを使い分け、探索や最適化などの作業をAIに任せ、その結果を踏まえて人間が意思決定する流れを示した。また、設計者の嗜好や技能、専門知識が蓄積されることで、個人にひも付く存在としてバーチャルコンパニオンが機能し得る可能性もあるという。

 さらに、NVIDIAが提唱する「AIファクトリー」についても協業の重要テーマの1つに据える。NVIDIAは、AIライフサイクル全体を加速、効率化するために設計された次世代の専用コンピューティングインフラであるAIファクトリーの設計に、ダッソー・システムズのMBSE(Model-Based Systems Engineering)を採用し、まず「NVIDIA Rubin Platform」から適用を開始し、「NVIDIA Omniverse DSX Blueprint」へ統合していく方針だ。これにより、大規模AIファクトリーの設計/計画/検証のプロセスを、バーチャルツイン上で扱えるようになる。

 インダストリアルAIプラットフォームの展開に当たり、主権や知的財産(IP)保護を重視する姿勢も打ち出す。ダッソー・システムズはクラウドブランド「OUTSCALE」を通じ、持続可能かつ主権性を重視したクラウド戦略の一環としてAIファクトリーを展開する。顧客のデータプライバシー、IP保護、データ主権を確保しながら、3DEXPERIENCEプラットフォーム上でAIモデルを運用できる環境を整える方針だ。

 両CEOによる対談では、今回の協業に期待を寄せる企業/団体として、乳製品メーカーのBel Group、オムロン、米EV(電気自動車)メーカーのLucid、米ウィチタ州立大学の国立航空研究所(NIAR:National Institute for Aviation Research)などが挙げられた。

ダッソー・システムズとNVIDIAの協業を歓迎するパートナー企業の活用イメージ ダッソー・システムズとNVIDIAの協業を歓迎するパートナー企業の活用イメージ[クリックで拡大] 出所:ダッソー・システムズ

 両社は今回の取り組みを、インダストリアルAIプラットフォームを構築/検証/大規模展開するための長期ビジョンに基づく協業として位置付ける。フアン氏は「フィジカルAIは次なるフロンティアである」と述べ、NVIDIAのAIおよびOmniverseプラットフォームと、ダッソー・システムズの産業分野の知見を組み合わせることで、研究者、設計者、エンジニアが産業を“構築する”方法そのものを変革していく考えを示した。

(取材協力:ダッソー・システムズ)

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