3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第13回は、機械設計の要となる強度設計について、「計算」や「ツール」に入る前に設計者が整理しておくべき考え方を解説する。
連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もないエンジニアの皆さんを対象に、設計業務で押さえておくべき基礎知識や考え方などを分かりやすく解説していきます。
若手の設計者と話していると、「この部品、強度的に大丈夫でしょうか?」という質問を受けることがよくあります。この質問自体は健全ですが、同時に「強度設計」の本質がまだ整理されていないことも示しています。
強度設計とは、「大丈夫だと自分の言葉で説明できる状態を作ること」です。言い換えると、図面や3Dモデルの形状を見ながら、想定される荷重と壊れ方を説明できる状態を目指すことです。
今回は、強度設計を「計算」や「ツール」ではなく、材料力学に基づく“設計者の考え方”として整理していきます。
設計初心者の場合、設計の流れは次のようになりがちです。
形を作る
↓
寸法を入れる
↓
強度を確認する
しかし、本来、強度設計は最後の確認作業ではありません。
これらを考えた結果として形が決まります。これが強度設計であり、設計における重要な“見積もり”ともいえます。ここでいう“見積もり”とは、コスト見積もりだけではなく、「この形で成立しそうか」を事前に予測する、設計上の見積もりです。
強度設計の出発点は、材料でも寸法でもありません。まず「力の作用の仕方」の整理です。力の作用の仕方には、次の5種類があります(図1)。
(1)引張:部材を両側から引き伸ばす力
(2)圧縮:部材を押しつぶす方向の力
(3)曲げ:片側は引張され、反対側は圧縮される力
(4)ねじり:部材を軸方向にひねる力
(5)せん断:部材をずらす方向の力
最もイメージしやすいのは、ロープの両端を外側に引っ張った状態です。部材の断面全体が引き延ばされます。材料力学的には、断面積に対してどれだけの力がかかっているかで、引張応力が決まります。強度計算の“基準”になりやすい力の状態といえます。
柱を上から押す、ボルトで部品を締め付けるといった場面で発生します。引張との違いは、変形の向きが逆なだけですが、圧縮では材料が壊れること以外にも注意すべき現象があります。それが「座屈(ざくつ)」です。
座屈とは、例えば紙の両端を上下に持ち、上から軽く押すと、まっすぐの状態を保てずに横方向に折れ曲がるように変形する現象です。このように、部材に圧縮力がかかったとき、材料が壊れる前に突然横方向に曲がってしまう現象を座屈といいます。引張では起こらず、圧縮特有の現象です。特に、細くて長い部材や、拘束条件のある部材では起こりやすくなります。
曲げが発生すると、部材内部では片側が引張、反対側が圧縮という状態が同時に起きます。引張だけ、あるいは圧縮だけで強度を考えていた結果、実際には曲げで破損してしまうケースも少なくありません。
回転軸やシャフト、ドライバーで回すボルトなどが代表例です。ねじりがかかると、断面内部にはせん断応力が発生します。
はさみで紙を切るとき、紙にはせん断力がかかっています。ボルトやピンで部品を固定している場合も、多くはせん断によって力を受けています。
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