「2025年大阪・関西万博」では「未来食堂」におけるロボット出展が求められた。HCIが開発したのは、モバイルマニピュレーター型のロボット「ロボボにゃん」である。リモートロボティクスの「Remolink」を使って遠隔操作もできるが、調理現場の邪魔にならないよう、外部向けの発信/案内を担う設計とした。
ところがネットワーク環境が不安定でクラウドAIが機能せず、AIをローカルに実装する方向に切り替えた。コンピューティング性能とバッテリー消費のトレードオフに直面し、通信回線の切り替えや構成変更も余儀なくされた。
「ORAパビリオン」では協働ロボットでお茶を入れ、搬送ロボットが提供するデモ展示も行った。このシステムも初期には通信障害に悩まされたが、5GポケットWi-Fiから4Gへの変更、IoT電波帯(920MHz)の利用、さらには産業用5Gルーターの導入と有線ネットワークへの切り替えを行うことで、通信の安定性を大幅に向上させた。
万博会場自体の通信環境も日々変わっており、後に4Gから5Gへ移行させたことで約25%向上し、ユーザー体験が改善されたという。奥山氏はこれらは「ロボットの信頼性向上に向けた貴重な教訓となった」と語った。
万博の来場者は「楽しむこと」を目的としているため、ロボットが人々の記憶に残ることを重視した。たこ焼き店「くくる」にもたこ焼きロボットを提供した。マヨネーズをトッピングするのだがSNSでは「顔がこわい」と賛否両論。だが以前の万博での歴史を踏まえて、何よりもロボットが話題になることを狙ったと述べた。
最後に奥山氏は、HCIが目指すのは「ロボットと人の共存社会」の構築であり、そのためにはロボットの自律化が不可欠だと締めくくった。万博での経験は技術的な課題の洗い出しと解決、そしてロボットが社会に浸透していく過程でのコミュニケーションの重要性を学ぶ貴重な機会となったという。
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